―『貞観政要』巻一より
🧭 心得
どれほど親しい親族関係であっても、礼には守るべき順序がある。
太宗は、自身の皇子が叔父に対して礼を尽くすのは当然としても、叔父がそれに返礼するのは礼の秩序を乱すことだとして改めさせた。
親しき仲であれ、地位や立場に応じた節度を守ることが、真の礼節であり、ひいては王族の威儀を保つ道となる。
🏛 出典と原文
貞觀(じょうがん)二年、中書舎人(ちゅうしょしゃじん)高季輔(こうきほ)が上疏(じょうそ)して曰(いわ)く、「竊(ひそ)かに見(けん)ずるに、密王(みつおう)元暁(げんぎょう)等(ら)は俱(とも)に是(これ)懿親(いしん)にして、陛下(へいか)の友愛(ゆうあい)の懷(こころ)い、義(ぎ)は古昔(こせき)よりも高(たか)く、分(わか)ちて以(もっ)て車服(しゃふく)を賜(たまわ)り、藩維(はんい)を委(ゆだ)ねたり。須(すべか)らく禮儀(れいぎ)に依(よ)りて、以(もっ)て瞻望(せんぼう)に副(そ)うべし。比来(ひごろ)帝子(ていし)、諸叔(しょしゅく)に拜(はい)するを見(み)れば、諸叔亦(また)卽(すなわ)ち拜(はい)を答(こた)う。王爵(おうしゃく)は同(おな)じくすれども、家人(かじん)には禮(れい)有(あ)り。豈(あに)此(こ)の如(ごと)き昭穆(しょうぼく)を顚倒(てんとう)するに合(あ)わんや。伏(つつし)んで願(ねが)わくは一(いつ)に訓誡(くんかい)を垂(た)れ、永(なが)く彝則(いそく)を循(したが)わしめんことを」。
太宗(たいそう)乃(すなわ)ち詔(みことのり)して元暁等(ら)に曰(いわ)く、「王恪(おうかく)・魏王泰(ぎおうたい)兄弟の拜(はい)に答拜(こたえ)は不得(ゆる)さず」と。
🗣 現代語訳(要約)
太宗は、皇子が叔父に拝礼をするのはよいが、叔父がそれに対して拝礼を返すのは礼に反するとの進言を受け、以後返礼を禁じた。王爵は同格でも、親族としての礼順は守られるべきだとした。
📘 注釈
- 懿親(いしん):皇帝に近い親族(とくに兄弟や叔父)。
- 昭穆(しょうぼく):宗族・家系における長幼や上下の秩序。
- 王爵同(おうしゃくおな)じしといえども:地位は同じでも、血縁内での序列は異なるという意。
- 彝則(いそく):変えてはならない礼儀・規範。
🔗 パーマリンク案(英語スラッグ)
order-in-rituals
(主スラッグ)- 補足案:
respect-with-hierarchy
/no-reciprocal-bows
/etiquette-in-family-rank
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