――数字で全体像を構築し、事業別に戦略を落とし込む
前回は、会社全体として「5年後にどれくらいの経常利益を目指すか」という長期的な数値目標を設定しました。
次のステップは、その年間目標経常利益額を、各事業にどう割り振っていくかをイメージすることです。ここからが、戦略を現場に落とし込む「具体化フェーズ」の始まりです。
1. 各事業への割り振りは“構想図”として考える
たとえば、会社に複数の柱があるとしましょう。
- 事業1:主力事業(既存顧客向けサービス)
- 事業2:新規市場向けプロダクト
- 事業3:サブブランドまたは周辺ビジネス
このような構成のなかで、年間で必要な経常利益額を事業ごとにどう分けて担うかを構想します。
これはまだ「計画」ではなく、「構想」です。現実的かどうかよりも、まずは全体の絵を描くことが大切です。
2. 割り振りの考え方
目標利益の配分には明確なルールがあるわけではありませんが、以下のような視点を意識しましょう。
- 事業のポテンシャル(市場規模、競争環境)
- 既存実績(これまでの売上や利益率)
- 成長期待(これから伸びそうな分野)
- リソースの割当て可能性(人材・資金の配分)
たとえば、今後伸ばしたい新規事業にあえて高めの利益目標を置くのもひとつの戦略です。逆に、安定的な主力事業で土台を固めるという考え方もあります。
3. ある程度の「根拠」は必要
この段階でも「イメージベース」で構いませんが、まったく根拠がないと後の計画とズレやすくなります。
- 自社の過去実績(利益率・売上・人員数など)
- 業界平均(競合の決算情報やIR資料)
- 商工会・業界団体のデータ(中小企業白書など)
こうした情報を参考にして、「うちの事業Aなら、これくらいの利益率はいけるはず」といった見立てを作っておきましょう。参考にするのは、経営状態が良い会社に限定するのがコツです。
4. 基本指標で「設計図」を作る
事業別に利益のイメージを組み立てる際には、以下のような指標を使って表にまとめておくと全体像が整理しやすくなります。
項目 | 内容 |
---|---|
事業名 | 例:事業1(メインサービス)、事業2(EC販売)など |
目標経常利益額 | 年間でその事業からどれだけ利益を出したいか(例:2,000万円) |
経常利益率 | 売上に対する利益率(例:10%、15%など) |
目標売上 | 上記から逆算して算出される年間売上高(例:2,000万円 ÷ 10% = 2億円) |
想定成長率 | 昨年比での売上または利益の成長見込み(例:120%成長) |
月あたり1人あたりの売上(または利益) | 労働生産性の参考値(例:50万円/月/人) |
予測人員数 | その売上・利益を達成するために必要な人員の見積(例:5人) |
備考 | 特記事項、前提条件(例:一部を外注する、価格改定予定など) |
このような表を使って、**「数字を言語化」し、「構想を可視化」**していくことが経営計画の第一歩です。
5. 全体利益との「整合性」を必ずチェック
各事業に割り振った利益を合算したときに、全社で掲げた目標利益と整合しているかを確認することも重要です。
もし達成が厳しそうであれば、どこかの利益率を見直すか、リソース配分を調整する必要があるかもしれません。
- 「新規事業に過剰な期待をしていないか?」
- 「既存事業の売上鈍化リスクを織り込んでいるか?」
- 「固定費・人員の見積もりが甘くないか?」
こうした視点で定期的に見直すことで、計画の精度がぐっと上がります。
まとめ:事業別の利益構造を描くことが、会社の実行力をつくる
- 全体の利益目標を事業別にブレイクダウンする
- 割り振りは「仮の構想」でOK、ただし根拠や参考データは持つ
- 利益率や売上、人員数を組み合わせた設計図を作る
- 「目標 vs リソース vs 現実性」を意識して整合性をチェックする
こうした事業別利益の構築イメージがあることで、会社全体の動きがブレにくくなります。そして、これが後の部署ごとのKPI設計やリーダーの役割分担にもつながっていくのです。
コメント