善を好み、悪を憎む――それは仁の眼をもつ者にしかできない
孔子は、人を愛したり、嫌ったりすることは容易ではないと説いた。
なぜなら、それが真に正しくできるのは、人格的に成熟し、仁の徳を身につけた者だけだからだ。
仁者は、人の中の善に対して深い共感をもち、悪に対しては揺るぎない拒絶の心をもつ。
単なる好き嫌いや感情論ではなく、その人の行いや本質を見極めたうえで、敬意を持ち、あるいは距離を取る。
つまり、仁をもつ人こそが、人の本質を見抜き、真に価値ある関係を築くことができるのだ。
原文とふりがな付き引用
子(し)曰(いわ)く、惟(ただ)だ仁者(じんしゃ)のみ、能(よ)く人(ひと)を好(この)み、能(よ)く人(ひと)を悪(にく)む。
本当に人を愛したり、憎んだりできるのは、仁徳ある者だけだ。
それは人間理解の深さと、徳の高さの証でもある。
注釈
- 惟(ただ)だ…~だけが、という限定。
- 仁者(じんしゃ)…思いやりと道徳性を備えた人格者。孔子が理想とする人間像。
- 好む(このむ)…心から敬い、近づきたいと思うこと。
- 悪む(にくむ)…相手の在り方や行いに対して倫理的な拒絶を感じること。
- 単なる感情としての「好き・嫌い」ではなく、「善悪の判断」を意味する。
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