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📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章「バラモン」第4偈)
或る修行者・バラモンたちは、
迷いの生存(サンサーラ)に執着し、
互いに異論を抱いて論争を繰り返す。
これらの者は愚者である――
それは、彼らが一方しか見ていないからである。
――『ダンマパダ』第33章 第4偈
🔍 逐語訳(意訳)
一部の修行者やバラモンたちは、
この迷いの世界に執着し続けながら、
他者と意見を異にしては争い、言い争いに没頭する。
だが彼らは真理を知らぬ愚か者である。
なぜなら、彼らは真理の一側面しか見ていないからだ。
🧘♂️ 用語解説
- 執著(アーサヴァ):煩悩的執着。自分の見解に固執し、そこから離れられない状態。
- 異論をいだいて論争する:主に宗教的・哲学的な教義論争や解釈の対立を意味する。
- 愚者(バーラ):知識の有無ではなく、智慧(パンニャー)に欠ける者のこと。
- 一方だけしか見ていない(エーカンサー):偏見、視野の狭さ。真理の全体性を見失うこと。
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
ある修行者たちは、悟りを求めているはずなのに、迷いの世界(欲望や執着)にとらわれたまま、他者と自説の違いで言い争っている。
しかしそれは真の智慧ではなく、偏った一面しか見ていない愚かさからくるものであり、彼らは真理に至ることはできない――仏陀はそう警告している。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、「真理を求める者が陥る争いの罠」に対して鋭い批判を与えています。
本来、仏教の道は執着からの解放をめざすものですが、いつしかその道そのものが信念の対立や知識の競争になってしまうことがあります。
現代でも、思想や信条の違いを越えて歩み寄ることが難しい時代において、「全体を見ず、部分にこだわること」がいかに愚かであるかを思い出させてくれる教えです。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
視野の広さと柔軟性 | 自分の経験や論理だけにこだわらず、他者の視点を取り入れることで、より本質的な判断ができる。 |
対立より共創 | 論争で勝つよりも、互いの立場を理解し合い、共通の目標に向かう姿勢が組織を強くする。 |
エゴにとらわれない対話 | 「正しいこと」を言うよりも、「相手が何を必要としているか」に耳を傾けることが本質的なリーダーシップ。 |
真理の多面性への理解 | 問題の背景や多角的な要因を無視して単純化すると、判断を誤るリスクが高まる。分析や合意形成のプロセスでも重要。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「一つの側だけを見て、すべてを知ったつもりになるな。」
真理は一面ではなく、多面である。
一方に偏り、争うことに夢中になれば、真実を見失う。
相手の立場を理解し、自らの視野を広げる者こそが、智慧を得て道を進むことができる。
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