MENU

真の世界では、万物が我と一体となる

この現実の世界は、幻にすぎない仮の場。
名声や富は言うまでもなく、自分の肉体さえも天から預かった一時の形にすぎない。
だが、真実の境地においては、父母兄弟といった近しい者はもちろん、あらゆる万物が自分とつながり、一体の存在であると気づかされる。

この「一体感」を見抜き、心から理解した者だけが、世の重責を担うことができ、また世間のしがらみから自由になって、まっすぐな道を歩める。


原文(ふりがな付き)

幻迹(げんせき)を以(もっ)て言(い)えば、功名(こうみょう)富貴(ふうき)に論(ろん)無(な)く、即(すなわ)ち肢体(したい)も亦(また)委刑(いけい)に属(ぞく)す。真境(しんきょう)を以て言えば、父母兄弟(ふぼけいてい)に論無く、則(すなわ)ち万物(ばんぶつ)も皆(みな)吾(われ)と一体(いったい)なり。人(ひと)能(よ)く看(み)得(え)て破(やぶ)り、認(みと)め得て真(しん)ならば、纔(わず)かに天下(てんか)の負担(ふたん)に任(にん)うべく、亦た世間(せけん)の韁鎖(こうさ)を脱(だっ)すべし。


注釈

  • 幻迹(げんせき):仮の現実世界。目に見えるものだが、真の実体ではない。
  • 功名富貴(こうみょうふうき):名声と財産。社会的な成功を象徴するが、本質的価値は問われる。
  • 委刑(いけい):一時的に預けられた形骸。自分の肉体も仮のものという意味。
  • 真境(しんきょう):真実の世界、悟りの境地。
  • 万物皆吾一体(ばんぶつみなわれいったい):天地自然を含め、すべてのものと自分が一体であるという思想(『荘子』の斉物論より)。
  • 韁鎖(こうさ):馬の手綱や鎖の意。転じて、世間の束縛やしがらみ。

パーマリンク(英語スラッグ)

  • oneness-with-all(万物との一体感)
  • illusion-and-truth(幻と真の境界)
  • freedom-through-unity(一体感から生まれる自由)

この心得は、個人の枠を越えて世界との一体感を持つことの尊さを説いています。

目次

1. 原文

以幻迹言、無論功名富貴、卽肢體亦屬委形。
以眞境言、無論母兄弟、卽萬物皆吾一體。
人能看得破、得眞、纔可任天下之負擔、亦可脫世閒之韁銷。


2. 書き下し文

幻迹を以て言えば、功名富貴を論ぜず、即ち肢体も亦た委形に属す。
真境を以て言えば、父母兄弟を論ぜず、即ち万物も皆吾と一体なり。
人、能く看得て破り、得て真ならば、纔かに天下の負担に任うべく、亦た世間の韁鎖を脱すべし。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 幻迹を以て言えば、功名富貴を論ぜず、即ち肢体も亦た委形に属す。
     → この世の現象(幻のようなもの)から見れば、名誉や財産は言うまでもなく、私たちの身体すらもただの一時的な形にすぎない。
  • 真境を以て言えば、父母兄弟を論ぜず、即ち万物も皆吾と一体なり。
     → 真実の境地から見れば、親兄弟だけに限らず、あらゆるものが自分と一体である。
  • 人、能く看得て破り、得て真ならば、纔かに天下の負担に任うべく、亦た世間の韁鎖を脱すべし。
     → 人がこの真実を見破り、悟ることができれば、初めて天下を背負う責任を果たすことができ、同時に世俗の束縛からも解き放たれるだろう。

4. 用語解説

  • 幻迹(げんせき):この世の現象、仮の姿。夢や幻のように儚い現実。
  • 功名富貴(こうみょうふうき):名誉や成功、財産など、世俗的価値。
  • 委形(いけい):肉体を「委ねられた形」=借り物の存在として見る概念。仏教的な「仮の身」。
  • 真境(しんきょう):真理を悟った状態、本質的な視点。
  • 萬物皆吾一體(ばんぶつ みな わが いったい):あらゆる存在が自分とつながっているという全体的な一体感。
  • 看得破(かんとく は):真実の本質を見抜くこと。
  • 得眞(とくしん):真理を得る、真実を悟ること。
  • 韁鎖(こうさ):馬や家畜を縛る手綱と鎖。ここでは「俗世の束縛、しがらみ」の象徴。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

この世の現象は儚く、名誉や財産はもちろん、自分の身体すらも一時的な存在にすぎない。
しかし、真理の境地から見れば、親兄弟などの身近な存在に限らず、すべての万物は自分と一体である。
このことを本当に見抜いて悟ることができる人こそが、天下の大任を担うにふさわしく、また俗世の束縛をも超越できるのである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「本質を見抜く力」こそが、真のリーダーシップや自由を得る鍵であることを説いています。

  • 世の中の成功や地位、財産、そして肉体すら“仮のもの”と捉える視点。
  • 真理に目覚めた者は、自我を超えて「万物と一体」となる慈悲と包容力を持つ。
  • この視座を得てこそ、重責を担う覚悟と、世間に惑わされない自由な生き方が可能となる。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 「外見や肩書きにとらわれない視点を持て」

ポジション、年収、学歴、称賛──それらは“幻迹”に過ぎず、真の価値ではない。本質を見る眼がなければ、責任ある仕事は務まらない。

● 「本質を掴む者こそ、リーダーにふさわしい」

経営・組織運営においては、派手な戦略やスローガンよりも、「人間と社会の本質」に根差した判断が信頼と継続性を生む。

● 「利害や役割を超えて、全体と一体となる感覚を持て」

部門間の壁を越え、顧客・取引先・社会全体と一体となる視点を持つことで、真の価値創造と持続的な関係が築ける。

● 「俗世の“韁鎖”を超える自由な思考を」

世間の評価や常識に縛られず、真理に従って判断・行動する人材こそ、次世代の経営者・創造者としての資質を持つ。


8. ビジネス用の心得タイトル

「本質を掴み、束縛を越える──真理の眼がリーダーをつくる」


この章句は、単なる思想にとどまらず、「本質を見抜く思考の鍛錬」がいかに人間性とビジネス力を高めるかを示唆しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次