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📖引用原文(日本語訳)
すでに得たものと、これから得られるはずのものと、
この二つは塵ほこりであり、病いであると知って、
心を安定統一した智者は、それを捨てよ。
――『ダンマパダ』 第二七章「観察」第十節
🧩逐語訳
- すでに得たもの:所有・地位・名誉・知識・経験など、過去に獲得したあらゆる成果。
- これから得られるはずのもの:未来への期待・成功・利益・称賛など。
- 塵ほこり(ラジャ):煩悩の象徴。心の清浄を曇らせる些末なもの。
- 病い(ヴィヤーディ):精神的苦悩・煩悩の比喩。執着は心の病である。
- 心を安定統一した智者(サマーヒタ・パンニャー):静寂と集中を得た上で、洞察力(智慧)に至った人。
- 捨てよ(パハーヤ):手放す、離れる、執着を断ち切ること。
🧠用語解説
- 塵(ラジャ)と病(ヴィヤーディ):ともに「心を乱すもの」の象徴。塵=外的刺激、病=内的執着。
- サマーディ(定):仏教の瞑想における「心の統一状態」。心が一点に安定し、揺らがないこと。
- 智慧(パンニャー):正しい理解。空・無常・無我の真理を見抜く眼。
- パハーナ(捨):仏道の実践における「捨離」の徳目。得たものさえ手放す覚悟。
🪷全体の現代語訳(まとめ)
今すでに手にした成功や財産、また将来手にできるかもしれない栄誉や期待――それらは、どれも心を曇らせる「塵」や「病」のようなものだと理解しなさい。
集中と洞察を備えた智者は、そうした得失への執着を捨て、清らかな心で歩むのだ。
🌱解釈と現代的意義
この節は、「所有」や「成果」に対する執着を手放すことの重要性を説いています。
私たちは、得たものを誇り、得られるはずのものに期待し、心を縛られます。だがその執着が、喜びのように見えて実は苦しみの種であることを、仏教は鋭く見抜きます。
“心が安定した人”だけが、「もう持っているもの」も「これから欲しいもの」も等しく“手放す価値がある”と悟ることができるのです。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務への応用例 |
---|---|
過去の実績への執着 | 昔の成功体験にとらわれ続けると、変化の波に乗れない。常に「今」に集中することが重要。 |
未来への過剰期待 | 成果・昇進・報酬への期待に執着しすぎると、現実とのギャップが苦しみを生む。プロセス志向が鍵。 |
安定した判断力 | 心を一点に定めたリーダーは、得失に動じず、組織を長期的視点で導くことができる。 |
離欲のマネジメント | 物欲や見栄による経営判断は迷走を招く。「何を捨てるか」の視点を持つリーダーが、企業文化を高める。 |
📝心得まとめ
「持つことも、得ることも、心を曇らせる塵にすぎぬ。清らかな眼は、それを見抜き、そっと手放す」
得たものにしがみつき、得ようとするものに焦がれる限り、心は常に波立ち、安らぎを得ることはない。
しかし智慧を得た者は、執着の正体を「塵」と見抜き、潔くそれを手放す。
そこにこそ、真の安定と、揺るぎない自由があるのです。
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