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■引用原文(日本語訳)
頭を剃ったからとて、身をつつしまず、偽りを語る人は、〈道の人〉ではない。
欲望と貪りにみちている人が、どうして〈道の人〉であろうか?
―『ダンマパダ』第11章 第13偈
■逐語訳
- 頭を剃ったからとて(na muṇḍakena samaṇo):髪を剃って出家の姿をしていても、
- 身を慎まず、偽りを語る人は(abbato alikaṁ bhaṇe):節度なく、嘘をつく者は、
- 〈道の人〉ではない(samaṇo):本当の修行者とは言えない。
- 欲望と貪りにみちている人が(icchālobhasamappito):欲望と貪欲に満ちた者が、
- どうして〈道の人〉であろうか(kuto samaṇatāyaṁ):どうして修行者であると言えるだろうか?
■用語解説
- 頭を剃る(muṇḍa):出家者・修行者の象徴的な姿。ここでは「外見上の宗教的シンボル」の意。
- 道の人(samaṇa):仏道修行者、または真理を実践しようとする者。形よりも内容が問われる。
- 偽り(alikaṁ):虚偽、二枚舌、欺き。真理に背く言葉。
- 欲望と貪り(icchā・lobha):仏教で戒められる根本的煩悩の一つ。欲の制御ができていない状態。
■全体の現代語訳(まとめ)
仏陀は、「見かけが修行者の姿であっても、心が偽りに満ち、欲望を抑えられない者は、本当の〈道の人〉ではない」と説いています。真理の実践者たる資格は、外見や言葉にあるのではなく、誠実さと内面の節制にあるのです。
■解釈と現代的意義
この偈は、「外見ではなく本質が大事である」というブッダの核心的思想を表しています。
現代社会でも、「立派な肩書き」「道徳的な発言」「宗教的・哲学的な格好」など、外面の装いで自らを高めようとする人が少なくありません。しかし、仏陀は「欲望と偽りが心にある限り、どれほど清らかな外見をしていても、それは道に背いたものである」と断言します。
この偈は、自己の内面への誠実な目線を取り戻すよう促しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 現代ビジネスでの適用例 |
---|---|
リーダーの本質 | 高尚なスローガンや理念を掲げても、実態が不誠実で貪欲であれば、信頼は得られない。 |
ブランドと実態の乖離 | 見た目や発信内容を整えても、実際のサービスや社員対応が誠実でなければ、顧客離れが起きる。 |
パーソナルブランディング | SNSなどで理想の人物像を演じても、欲望や虚偽が漏れ出せば信頼を失う。本質が行動に現れる。 |
採用や評価の視点 | 見かけの経歴や態度よりも、「誠実に嘘なく、節度をもって行動する人物か」を見抜く力が問われる。 |
■心得まとめ
「偽りと欲の上に立つ人に、真の道はひらかれぬ」
仏陀のこの偈は、外見や言葉ではなく「内なる節度・誠実さ・真理への忠実さ」が道を歩む者の条件であると説いています。
髪を剃り、袈裟をまとっても、心が偽りに満ちていれば、それは単なる装いにすぎません。
現代においても、「どう見えるか」ではなく「どうあろうとするか」を重視する姿勢が、信頼と真価を生み出すのです。
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