■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「それは万物の外にあり、かつ内にあり、
不動であり、かつ動き、
微細であるから理解されない。
それは遠くにあり、かつ近くにある。」
(『バガヴァッド・ギーター』第13章 第15節)
■逐語訳
それ(知るべき存在=ブラフマン/真理)は、
すべてのものの“外側”にも“内側”にも存在しており、
動かないようでいて動いてもおり、
非常に微細で知覚しがたく、
同時に遥か彼方にも、すぐ目の前にも在る存在である。
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
外にあり、かつ内にあり | 真理は宇宙の構造全体に存在しつつ、各個人の内にも宿る。 |
不動であり、かつ動く(アチャラ/チャラ) | 永遠不変でありながら、現象世界に働きかけて変化をも生む。 |
微細(スークシュマ) | 五感で捉えられないほど精妙な存在。知性・瞑想を通じてしか理解されない。 |
遠くにあり、かつ近くにある | 宇宙的な規模を持ちながら、同時に一人ひとりの心の中にもある。遍在性と親密性の統合的表現。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、「知るべき存在(ブラフマン)」とは、どこか遠くにある特別なものではなく、
世界のすべてに染み渡り、自分の内にも外にも存在し、静かにしていても全てを動かし、
目に見えないが確かに在るもの――そのような“在り方そのもの”であると説いている。
■解釈と現代的意義
この節は、神あるいは真理が、空間や時間、形や場所に限定されるものではないという“超越と内在の同時性”を表しています。
「神は遠くにいるのではなく、常にそばにある」――これは抽象的な神観ではなく、
日常のあらゆる中に真理や意味が宿っているという、非常に具体的な生き方への示唆です。
■ビジネスにおける解釈と適用
視点 | 解釈と応用例 |
---|---|
気づきの視点 | 解決のヒントは「遠く」ではなく、「今ここ」にある。大きな戦略も日々の観察から生まれる。 |
経営哲学 | 会社の価値や理念は、抽象的な理念(遠く)と、日常の行動(近く)の両方に現れる。 |
チームマネジメント | 偉大なリーダーは「上から」動かすだけでなく、個々の中に在る力を見抜き育てる(外にあり内にある)。 |
変化への対応力 | 外の状況は絶えず変わっていても、自分の中心(不動)を保ちながら、状況に応じて動く柔軟さが必要。 |
■心得まとめ
「それは“どこか”ではなく、“すでにここ”にある」
『バガヴァッド・ギーター』は、真理は遠く離れた理想ではなく、すでに自分の内にも外にも在るものだと説いています。
静かで動かず、微細で捉えがたくとも、それは人生のあらゆる場面に息づいています。
この「近くて遠いもの」を感じながら行動する人は、内なる軸を保ちながら、時代の変化にも柔軟に応じて生きることができるのです。
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