MENU

占有率とは

目次

占有率の本質:市場での存在感を可視化する指標

占有率とは、水に溶かしたインクの濃さに例えられる。水の量が業界全体の売上規模を表し、インクの量が特定の企業の売上を示す。インクが濃ければ濃いほど、その企業の占有率が高いと考えればよい。

占有率とは、業界全体の売上を100%としたときに、各企業の売上がその中で占める割合を指す。

たとえば、一滴のインクをプールに垂らしても、色はほとんど見えない。同様に、ドラム缶いっぱいの水にインクを加えたところで、目に見える変化は起きない。

どんぶり一杯の水にインクを垂らすと、ようやく薄く色がつき始める。一方、さかずき一杯の水に一滴のインクを落とせば、色ははっきりと見える。

このように、占有率が一定以上になれば、市場でその存在が認識されるということだ。

逆に、色として認識されない程度のインク量は、市場で注目されない占有率に過ぎない。

このような占有率は「限界的占有率」と呼ばれ、それに該当する企業は「限界生産者」や「限界業者」とされる。同様に、商品においては「限界商品」と表現される。

限界生産者や限界商品は、流通業者、消費者、さらにはエンドユーザーからもその存在を認識されることがない。つまり、市場においてその存在を受け入れられないということだ。(この「市場に存在を認められない」という具体的な意味については、「経営戦略篇」で詳しく触れている。)

結局のところ、それは「市場で生き残れない」という現実を意味している。

限界生産者や限界商品は、流通業者や消費者、さらにはエンドユーザーにさえ、その存在を認識されない。

市場で存在を認められないとは具体的にどういうことかについては、「経営戦略篇」で説明した通りだ。要するに、それは「市場で生き残ることができない」ということに他ならない。

小企業の進出神話と市場競争の現実

年商が2億円にも満たない地方の食品会社A社の社長は、「売上を伸ばすには、大消費地を狙うことが重要だと考え、東京、大阪、名古屋に進出しました」と語る。

しかし、その結果、A社の売上は一向に伸びることなく、数年来、食うや食わずの状態を続けているのが現状だ。

「売上増大には大消費地を狙え」という考え方は、企業の規模に関わらず多くの会社が信じている一種の「神話」だ。

この信念のもと、ごく少数の賢明な企業を除き、多くの企業がこぞって大消費地を目指す。その結果、大消費地では百の需要に対して二百の供給が集中し、熾烈な競争が繰り広げられているのが実情だ。

こうした市場で、力の弱い小企業が成果を上げることはほとんど不可能に近い。特に地方の小企業が「東京進出」や「大阪進出」といった「かっこいい」動きをしても、その大半は失敗に終わるのが現実だ。

調査を進めると、進出先での得意先自体が限界生産者だったり、細々とどさ回り営業を続けているような状況であることが多い。結果として、その営業所の収益が運営費をかろうじて賄える程度であれば、むしろ良いほうだと言える有様だ。

どれだけ需要が存在していても、その需要を手にするためには激しい競争に打ち勝つだけの戦力がなければ意味がない。市場での戦いは、まさに「力と力のねじり合い」であり、その現実を忘れてはならない。

大消費地での失敗にもかかわらず、その原因に気づかないまま、「成果が上がらないのは、まだ進出していない地域があるからだ」と思い込む。

そして、新たな地域へと進出を繰り返し、結果的に失敗をさらに拡大させているのが現状だ。

未開拓の地域が存在するからその地域に進出する、あるいは市場占有率が低い地域に注力するというのは、すでに市場で大きなシェアを握っている「強者」の戦略といえる。

勝てる市場を選ぶ戦略:地域トップを目指す「蛇口作戦」

「弱者」の戦略とは、まず自社の現状の力で生き残りに必要な市場占有率(詳細は後述)を確保できる地域を選び、そこで戦いを展開することにある。

その地域とはどのような場所なのかを考えてみる必要がある。たとえ全国規模でトップシェアを誇る企業であっても、特定の地域に投入できるリソースには限りがあるのだ。

その限界を超える戦力を自社で投入できる地域こそがターゲットとなる(詳細は後述)。その地域を戦場に選び、徹底的に「蛇口作戦」を展開して、地域内でのトップポジションを奪取するのだ。

こうしてその地域で「強者」となることで、生き残りに必要な条件を確立することが可能となる。

強者の利点は、たとえ限定された地域であっても、その地域内で「知名度」が飛躍的に高まり、企業としての信用が増す点にある。

これにより、販売促進、物流、さらには情報収集に至るまで、すべてを効率的かつ低コストで実現できる。その結果、収益性が向上し、この利益が新たな戦力を生み出す原動力となる。

この新たに生まれた戦力を、次なるターゲットとなる地域―もちろん、有利な戦略を展開できる地域―へ投入し、そこで再び高い市場占有率を確保していくのだ。

効率的な戦略展開と生存をかけた成長モデル

このようにして、次々と日本一強い地域を築き上げていくことこそが、正しく、最も効率的で、かつ低コストな戦略である。

そして、この「日本一」の地域を全国にわたって網羅したとき、真の完全制覇が達成されるのだ。

こうした状況は、現実的にはほとんど起こり得ないし、実際にそうする必要もない。さらに言えば、完全制覇が必ずしも最良の道とは限らないのだ。

ただ伝えたいのは、「理論上はそうなる」という点だ。この理論を土台にしながら、現実においてどのように効果的に戦略を進め、効率的な経営を実現するかが本質的な課題である。

占有率は、企業が市場でどれほどの影響力や存在感を持つかを示す指標です。市場全体を水とすれば、企業の売上はその水に染み込ませるインクのようなものであり、その色の濃さが占有率にあたります。濃い色であれば、市場での存在感が強く、消費者にも認知されやすくなります。しかし、インクが薄ければ、その存在はほとんど市場に認識されません。このような低い占有率の企業は「限界生産者」と呼ばれ、市場に認められず、淘汰されるリスクが高くなります。

多くの中小企業は、限られた資金や人員で無理に大都市や新たな地域に進出し、占有率が希薄であるがために失敗してしまいます。特に大消費地では強力な競争相手が多く、戦力を分散させた小企業は、効果的に戦えず収益を上げるのが難しくなります。

効率的な占有率確保のための戦略

小規模な企業の戦略は、まず自社のリソースでしっかりと占有率を確保できる地域を選ぶことです。限定された地域に戦力を集中させることで、その地域での知名度や信頼度を高め、企業活動を効率的に展開できる強者としてのポジションを築くのです。これは「蛇口作戦」とも呼ばれ、地域の市場を完全に押さえ、その地域での収益を基盤にさらに強力な戦力を生み出していく戦略です。

一度占有率を高めた地域の収益をもとに、同じようなアプローチで他の地域にも進出し、着実に占有率を増やしていきます。こうして「日本一の地域」を少しずつ増やし、全国にわたって強い拠点を構築していくことが、最も効率的で無駄が少ない戦略です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次