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市場での地位と占有率の確認

企業が生き残り、成長し続けるためには、業界内での「占有率」の重要性を徹底して理解することが不可欠である。以下、占有率の持つ意味とリスク、さらにそれを管理するための基本戦略について解説する。

目次

1. 市場での地位と占有率の確認

業界での占有率やランクこそ、最優先でチェックすべき項目だ。これが企業の立ち位置を示す重要な指標となる。

売上高が伸びているからといって安心はできない。他社が自社以上に売上を伸ばせばランクは下がるし、業界全体の成長率が自社の成長率を上回れば、占有率も下がってしまうからだ。

社長である以上、自社の売上高を常に業界全体や主要な競合他社と比較し、占有率の監視を怠ってはならない。

占有率が下がることほど危険なことはない。その先に待ち受けるリスクは、「倒産」だからである。倒産に至らずとも、低収益に甘んじることになり、外部環境の変化に対して脆弱な立場に立たされる。

2. 限界生産者のリスク

占有率が一定の限度を下回る会社は「限界生産者」と呼ばれる。

この限度は業界によって異なるため一概には言えないが、一般的には占有率「10%以下」、ランクでは「上位3分の1以下」であれば、ほぼ当てはまると考えてよいだろう。

経済活動が特定の地域に限定される業種――例えば砂利採取業や専門小売業などの場合、その地域内での指標を重視すればよい。つまり、自社の県内での占有率や、市内でのランクといった視点で考えるべきである。

限界生産者が危険な理由

では、なぜ限界生産者が危険なのか。その主な理由は二つある。

景気の変動

第一に、景気の変動が挙げられる。

不景気になると、末端の販売業者は在庫を減らし、仕入れ先を厳選する。その際、まず限界生産者からの仕入れが中止されるため、限界生産者は不況に対して脆弱である。

景気が上向くと、販売業者は在庫を増やそうとする。売上増加の期待に加え、価格が上がる前に仕入れを増やしておこうとする場合もある。

このとき、限界生産者から少量ずつ仕入れていては効率が悪いため、業者はまず大手から大量に仕入れを行い、限界生産者の仕入れは後回しにされる。

不況の際には真っ先に悪影響を受け、景気が回復する局面では最後に恩恵を受けることになるため、限界生産者は大きなダメージを受ける。

不況を経るごとに「企業格差が広がっていく」と言われるのは、この構造によるものだ。

商品が大量に輸入されたとしても、デパートや文房具店の万年筆の陳列ケースのサイズは変わらない。

こうした状況では、M社のような限界生産者の商品がまず真っ先に取り除かれることになる。結果として、M社の売上は急激に途絶え、一気に倒産へと追い込まれてしまったのだ。

売れない商品には、どれだけ効率やコスト、品質を追求しても意味がない。すべてが虚しくなることを知るべきだ。

M社の例は特定業界で起こった現象だが、これが日本経済全体に大規模に起きたのが、まさに「石油ショック」である。

膨大な仮需要が発生し、日本経済は瞬く間に売り手市場へと変わった。このとき、売り手側は売上実績の少ない取引先への供給を停止したり、制限をかけたりしたのだ。

経済変動がどのような形であれ、最初に打撃を受けるのは常に限界生産者である。

述べてきた理由により、限界生産者は常に弱い立場に置かれ、倒産の危険にさらされている。そして、規模の小さい企業から順に倒産していくことで、「寡占化」が進行していくのだ。

限界生産者の危険についてランチェスターの法則を適用すると、「企業の危険度は、企業規模の二乗に逆比例する」ということになる。つまり、規模が小さい企業ほど倒産のリスクが高く、逆に規模が大きいほど安定性が増すことを示している。

ランチェスターの法則は厳然として存在する。この法則を知らず、あるいは無視した結果、多くの企業が苦い経験を味わってきた。

社長が限界生産者の危険を理解していなかったことが、根本的な原因になってしまう。

占有率の重要性が企業存続の絶対条件であることを理解していなかったからこそ、社内に甘い雰囲気が生まれてしまうのだ、ということになる。

占有率を確保することの難しさを知っていれば、社内に甘いムードなど生まれるはずがないからである。

3. 高すぎる占有率がもたらすリスク

ここまで限界生産者や限界商品の危険、つまり占有率が低すぎることのリスクについて述べてきたが、一方で、占有率が高すぎることにも危険があることを知っておかなければならない。

1. 不要な高すぎる占有率保持

高すぎる占有率が、かえって業績不振の原因になっていたのだ。

S社の社長は、占有率は高ければ高いほど良いと信じていた。そして、占有率の目標を90%以上に設定し、営業部門にその達成を厳命していた。

単品の占有率ならともかく、業界全体の占有率をこれほど非常識な高水準に維持するのは、通常のやり方では到底不可能である。

そのため、無理を重ねてすべての受注を取りに行かざるを得なかった。その中には、収益性の低い案件や、無謀なダンピングを伴う受注も含まれ、競争に勝つための過度な安値設定が行われた結果、収益を無視した商品が全体の三割にも上っていた。

私の勧告は、占有率を60%程度まで下げることだ。削るべきは、不採算商品や競争が激しく利益が見込めない商品である。占有率だけを追い求め、収益性を後回しにするのは大きな誤りだ。

占有率は高ければ良いわけではない。「高すぎる危険」を認識する必要がある。占有率が60%を超えたら、それは高すぎると考えたほうがよい、ということだ。

2. 革新への意欲が薄れる

業界の占有率が高すぎることには別の危険もある。強力なライバルがいないために、革新への意欲が薄れ、営業の姿勢も傲慢になりがちで、お客様の不満を招くことがある。

最も恐ろしいのはお客様の不満だ。この不満を解消する競合会社が現れたとき、占有率を大きく奪われるリスクが常に潜んでいる。お客様は「待ってました」とばかりに、すぐに乗り換えてしまうからだ。

※単品の占有率

ここで誤解を避けるために付け加えたいのは、「占有率60%以上が危険だ」というのは業界全体の占有率についてであり、単品の占有率ではないという点だ。単品の場合、たとえ占有率が100%であっても、必ずしも危険とは限らない。

単品については、個別のケースごとに検討しなければ一概には言えない。しかし、単品で占有率が低い場合は、今後の収益を期待するのは難しいと考えてほぼ間違いないだろう。

4. 業界規模とのバランス

占有率についてさらに考慮すべき点は、会社の規模と業界全体の大きさとの関係である。

会社の規模に対して業界が大きすぎると、必要な占有率を確保するのが難しくなる。一方で、業界が小さすぎる場合は、たとえ高い占有率を確保しても、収益の絶対額が小さく、十分な利益にはつながらない。

これは、会社の規模と業界の大きさには相関関係があることを意味している。つまり、会社の規模に応じて「住みつく」べき業界が自然に決まるということだ。

したがって、自社の規模と不均衡な業界に身を置いたり、進出したりすることは、単に誤りであるだけでなく、常に破綻のリスクを伴っていることを理解しなければならない。

もう一つ重要なのは、自社の主要取引先が属する業界での占有率だ。もしも主要な取引先が限界生産者であれば、これは非常に深刻な問題である。早急に「二十六計」(最も得策な解決策)を決断しなければならない。いつ倒産の影響を受けるか分からないからだ。しかし、この決断は容易ではない。強い意志と少なくとも三年の歳月が求められる。そして、これを実行するのが社長の責務である。

以上の基本的な原則を踏まえ、自社と主要取引先の占有率を常にチェックすることが重要である。占有率こそが、会社が生き残るための第一の条件だからだ。

5. 占有率の見直しと戦略

長期的な事業継続を目指すうえで、定期的に占有率を見直し、競争力を高める戦略が求められます。過度なシェア確保にこだわらず、利益率の低い商品や競争が激化している商品を見直すことが、収益性を向上させる有効な手段です。

占有率の確認方法

結論

占有率はただの数値ではなく、企業の体力を示す指標である。占有率が低すぎても高すぎても、リスクを伴う可能性があるため、業界内での適切な位置を維持し、変動に耐えられる経営基盤を構築することが、企業の存続と成長の鍵となる。

課題

  • 自社の市場占有率を出すこと。
  • 目標を60%に設定し、達成の道筋を導き出すこと。
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