主旨の要約
孔子は、君子とは他人の長所や美点を見つけ、それを育てたり支えたりする存在であると説く。一方で、小人は他人の欠点や失敗ばかりを見つけ出し、悪い噂を喜ぶという。君子の徳は「称賛と支援」、小人の性は「非難と妨害」にある。
解説
この章句は、人の長所をどう扱うか、短所をどう見るかによって、人の在り方が分かれるという教えです。
孔子の言葉は簡潔ですが、その意味は深いです:
「君子は人の美を成し、人の悪を成さず。小人は是に反す」
【君子の態度】
- 他人のよい面を見つけて認める
- 成功に向けて応援し、協力する
- 他人の悪い面があっても広めたり煽ったりしない
君子は、**人の長所を育てようとする「徳の連鎖をつくる人」**です。
【小人の態度】
- 他人の欠点ばかりを探す
- 成功に対して妬みや無関心を示す
- 失敗や悪評に喜び、むしろ加担する
小人は、他者のマイナスに乗じて自己優位を得ようとする人であり、その行動は他人も社会も傷つけます。
この章句は、「どう他人を見るか」がその人自身の人間性を映す鏡であることを教えています。
現代でも、チーム・職場・教育・家庭など、あらゆる関係性の中でこの姿勢は問われ続けています。
引用(ふりがな付き)
子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は人(ひと)の美(び)を成(な)し、人の悪(あく)を成さず。
小人(しょうじん)は是(これ)に反(はん)す。
注釈
- 人の美を成す…他人の長所・美点・徳を認め、それを伸ばす手助けをすること。
- 人の悪を成さず…他人の失敗・過ち・悪評に加担せず、広げない。むしろ抑える姿勢。
- 小人(しょうじん)…器が小さく、自己中心的で、他人を妬む人のこと。表面的には賢そうに見えても、徳が欠ける。
パーマリンク(英語スラッグ案)
nurture-others-goodness
(他人の美点を育てる)uplift-don't-undermine
(他人を支えてこそ徳)true-virtue-praises
(真の徳は称賛に宿る)
この章句は、「他人をどう見るか」で自分の器が決まるという、非常に実践的かつ心に響く教えです。
批判や妬みが飛び交う場面こそ、君子の徳=“よいものを見て育てる”態度が光ります。
ビジネスや教育の場でも、リーダーとは他人の美点を活かす存在であるべきだという指針とも言えるでしょう。
1. 原文
子曰、君子成人之美、不成人之惡、小人反是。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は人(ひと)の美(び)を成(な)し、人の悪(あく)を成さず。
小人(しょうじん)は是(これ)に反(はん)す。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)
- 「君子は人の美を成す」
→ 君子(徳ある人物)は、他人の長所や善行を助けて完成させる。 - 「人の悪を成さず」
→ 他人の欠点や過ちを助長したり、失敗するよう仕向けたりはしない。 - 「小人はこれに反す」
→ 小人(徳のない人間)はこれと逆で、人の善を妨げ、人の悪を助けてしまう。
4. 用語解説
- 君子(くんし):人格・徳の備わった立派な人物。儒教における理想的人間像。
- 成人之美(せいじんのび):人の善い行為や長所を、成功・実現へと後押しすること。
- 成人之悪(せいじんのあく):人の悪事や短所・失敗を助長すること。意図的に悪の方向へ導くこと。
- 小人(しょうじん):自己中心的で、徳に欠ける人。打算や妬みに基づいて行動する人物。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「徳のある人(君子)は、他人の善い行いを後押しし、成功に導く。
しかし他人の悪事や失敗を手助けするようなことはしない。
一方、徳のない人(小人)はそれと逆で、善を妨げ、悪を助長する。」
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「他者とのかかわり方に表れる人間性」**を端的に示しています。
- 君子の美徳=“他人の成長・成功を支援する姿勢”
→ 君子は、他人の善意や努力を素直に認め、それをさらに伸ばすよう働きかける。 - 「足を引っ張る」か「背中を押す」かの違いが、人格を分ける
→ 小人は嫉妬や妬みによって、善を潰し、悪を面白がる。 - 見えないところで他人にどう関わるかが“本当の品格”
→ 表向きの優しさではなく、裏で誰かを応援できるかどうかが“君子の資質”。
7. ビジネスにおける解釈と適用
(1)「部下の成功を“喜び”、支援するリーダーであれ」
- 部下や後輩が成長したとき、それを引き立て、成功へ導けるリーダーが君子。
→ “手柄を横取りする”のではなく、“陰で支える”ことが真のリーダーシップ。
(2)「ミスや弱点を責めるより、“改善のチャンス”に変える」
- 過ちをあげつらって貶めるのではなく、成長の糧として支援する姿勢が信頼を築く。
→ “悪を成さず”とは、過ちに寛容であることではなく、“悪を助長しない”こと。
(3)「成功を讃え、妬まず、競わず」
- 他人の成果を素直に評価できる文化が、チームの結束と心理的安全性を生む。
→ “人の美を成す”企業文化は、生産性も高める。
8. ビジネス用の心得タイトル
「引き立ててこそ信頼、貶してこそ小人──善を育てる人であれ」
この章句は、**「人の成功を喜べるか/それとも妨げるか」**という、
きわめてシンプルでありながら人間性の核心に迫る問いを含んでいます。
職場・教育・家庭など、あらゆる人間関係において、**「人の善を伸ばす姿勢」**が真の信頼と尊敬を生み出すことを、孔子は静かに教えてくれます。
コメント