真に滋養となるものを選べ

■引用原文（日本語訳）

「生命力、勇気、力、健康、幸福、喜びを増大させ、美味、油質で、持続性があり、心地よい食物は、純質的な者に好まれる。」
――『バガヴァッド・ギーター』第17章 第8節

■逐語訳

生命力（アーユス）、精神力（サットヴァ）、力（バラ）、健康（アーローギャ）、
幸福（スカ）、満足（プリーティ）を増す食物――
味がよく（ラスヤ）、油分があり（スニグダ）、安定的で（スタイリヤ）、心地よく（フリディヤ）、満ち足りる（プリア）食物は、
純質（サットヴァ）に満ちた人々に好まれる。

■用語解説

• 純質的（サットヴァ）：清らかで調和と知性に満ちた心の性質。
• 生命力・勇気・力：心身の健全なエネルギーを象徴する。単に体力ではなく、精神力や意志力も含む。
• 油質（スニグダ）：適度な油分を含み、潤いと安定感を与える性質。アーユルヴェーダでも重要視される。
• 持続性（スタイリヤ）：長く安定したエネルギーをもたらす食物で、消化によく、満腹感が持続する。
• 心地よい（フリディヤ）：心にも安らぎを与える味・香り・後味を持つこと。

■全体の現代語訳（まとめ）

純質な人々が好む食べ物とは、身体に滋養を与え、精神を健やかに保ち、安定と喜びをもたらすものだ。
それは、味が良く、適度な油分を含み、消化にもよく、持続的に力を与える、心身に優しい食物である。

■解釈と現代的意義

この節は、食べ物の「味」や「快楽性」ではなく、それが自分の生命や心の状態にどのような影響を与えるかに意識を向けることの大切さを説いています。

つまり、「何を口にするか」が、その人の活力・思考・人間関係をも左右するという深いメッセージです。
現代の食文化では、刺激的・即効的・依存性の高い食品が人気ですが、ギーターは「調和と滋養」を重んじる食選びを勧めているのです。

■ビジネスにおける解釈と適用

観点	適用例
心身のマネジメント	エネルギーを継続的に保ち、集中力を高めるには、刺激的な食ではなく、滋養に富んだ食が必要。働き方と食事は密接に関係する。
判断力と食生活	長期的視点や冷静な判断力は、日々の身体の安定に支えられている。健康な食習慣は、経営判断にも影響を及ぼす。
職場文化	健康的な食事を推奨する企業文化は、長期的に創造力や士気を高め、離職率を下げる可能性がある。
選択力の象徴	食事の選び方には、その人の価値観と心の質が現れる。目先の快楽か、持続的な調和か――そこに人間性が問われる。

■心得まとめ

「選ぶものが、あなたを養い、あなたを創る」
真に力を与える食は、味や見た目よりも、心と身体を調和させる質に宿る。
仕事においても人生においても、選ぶべきは“持続可能な滋養”であり、“短期的刺激”ではない。
純質な者は、自らを整えるものを本能的に選ぶ――それが成長と安定の礎となる。