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📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章 第70偈)
「もしもバラモンが自分のつとめに関して彼岸に達した(=完全になった)ときには、真理を観ずるかれにとって、一切の縁は消滅するであろう。」
(『ダンマパダ』第33章 第70偈)
🔍 逐語訳・用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
バラモン | 血統や氏姓ではなく、悟りと徳によって「真のバラモン」とされる者。 |
つとめ | 精神的・倫理的実践(ダルマ)、修行者としての実践責任。 |
彼岸 | 煩悩・生死・苦悩の向こう側にある「涅槃(ニルヴァーナ)」の境地。 |
真理を観ずる | 現象界の無常・苦・無我を明らかに見抜き、悟りに達している状態。 |
縁(パッチャヤ/縁起) | あらゆる事象・感情・執着・関係性を生起させる「条件・要因」。 |
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
もし修行者が、自らの本分をまっとうし、煩悩の彼方へと至ったとき、
真理を見据えるその人にとって、
この世のあらゆる因縁・関係・連鎖――
つまり**「縁(えにし)」のすべてが自然と消え去る**。
それは、執着が薄れ、過去・現在・未来にわたる「心のしがらみ」が解けることであり、
彼の心は完全に自由となる。
🧭 解釈と現代的意義
この偈文が教えるのは、「縁」によって引き起こされる心の波――すなわち「関係への執着・期待・不安」から自由になるということです。
「縁」は人間関係や状況に関わるすべての因果関係を指します。
人は「過去の出来事」「他者の言葉」「未来の不安」に縛られて動けなくなることがあります。
しかし、真理を見た者は、それらが条件によって生まれた仮のものであることを理解し、それに翻弄されません。
つまり、真に目覚めた人は、「縁によって生きる」から「真理を見据えて在る」へと生き方が転換するのです。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用内容 |
---|---|
利害関係を超える判断力 | 取引や評価など、縁にまつわる影響に過剰に反応せず、本質的な判断に徹する。 |
不要なしがらみからの脱却 | 古い習慣や関係性に縛られず、組織や個人としての変革を選び取る勇気。 |
「すべきこと」に集中する姿勢 | 期待や評価よりも、自らの職責・理念に従って行動する者は、静かな信頼を集める。 |
自律的リーダーシップ | 周囲に依存せず、自らを律して、内側の確信から道を定める力を持つ。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「縁に縛られず、理に生きよ」
真に目覚めた者は、人との関係、過去の記憶、未来への不安――
あらゆる「縁」を超えて、ただ為すべきを為す。
そこには動揺も後悔もなく、あるのは静かな明晰さのみ。縁によって動くのではなく、真理によって在る。
この態度こそ、現代の混迷を超える叡智である。
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