非支配株主(ひしはいかぶぬし)とは、連結財務諸表において、親会社が完全に支配していない子会社の株式を保有する株主を指します。非支配株主は、子会社に出資しているものの、親会社のグループ全体の意思決定に直接関与しない株主です。
この記事では、非支配株主の基本的な概念、会計処理、影響、実務での注意点について詳しく解説します。
1. 非支配株主とは?
定義
非支配株主は、連結財務諸表において、親会社が100%の株式を所有していない子会社の残りの持分を所有する株主を指します。旧会計基準では「少数株主」とも呼ばれていました。
非支配株主持分
非支配株主が保有する子会社の純資産に対する持分(出資割合)を非支配株主持分と言います。これは、連結貸借対照表の純資産の一部として表示されます。
例
- 親会社Aが子会社Bの株式を80%保有。
- 残り20%の株式を保有する投資家や他企業が非支配株主となります。
2. 非支配株主の表示と計算
(1) 連結財務諸表での表示
非支配株主持分は、親会社株主持分とは別に、次のように表示されます:
- 連結貸借対照表:純資産の一部として「非支配株主持分」。
- 連結損益計算書:当期純利益の一部を「非支配株主に帰属する当期純利益」として表示。
(2) 計算方法
非支配株主に帰属する利益や持分は、次のように計算されます:
[
非支配株主に帰属する利益 = 子会社の当期純利益 × 非支配株主持分比率
]
[
非支配株主持分 = 子会社の純資産 × 非支配株主持分比率
]
3. 非支配株主に関する会計処理
(1) 非支配株主の計上
連結決算において、子会社の純資産のうち非支配株主に帰属する部分を「非支配株主持分」として計上します。
仕訳例
- 子会社の純資産:10億円
- 親会社持分:80%
- 非支配株主持分:20%
非支配株主持分:
[
10億円 × 20% = 2億円
]
仕訳
借方:資本 2億円
貸方:非支配株主持分 2億円
(2) 非支配株主に帰属する当期純利益
子会社の利益が発生した場合、非支配株主に帰属する部分を連結損益計算書で区分して表示します。
例:
- 子会社の当期純利益:5,000万円
- 非支配株主持分比率:20%
非支配株主に帰属する当期純利益:
[
5,000万円 × 20% = 1,000万円
]
4. 非支配株主の影響
(1) グループの純利益に対する影響
非支配株主がいる場合、子会社の利益の一部が親会社に帰属しないため、グループ全体の純利益に影響を与えます。
(2) 経営権の影響
非支配株主が一定の議決権を持つ場合、子会社の意思決定において親会社の経営権が制約されることがあります。
(3) 投資家の評価
非支配株主持分が多い場合、親会社の利益に占める割合が低くなるため、投資家が親会社の収益性を評価する際に注意が必要です。
5. 非支配株主に関する注意点
(1) 持分比率の管理
- 子会社の支配権を維持するためには、親会社が過半数以上の株式を保有する必要があります。
- 非支配株主持分が増加すると、親会社の意思決定が制約される可能性があります。
(2) 配当の扱い
- 子会社が配当を実施する場合、非支配株主にも配当が支払われます。
- 配当額が親会社の連結財務に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 会計基準の遵守
- 日本基準では非支配株主持分の表示が義務付けられており、国際会計基準(IFRS)でも同様の処理が求められます。
(4) 事業売却・買収時の処理
- 非支配株主持分を取得または売却する場合、連結財務諸表での持分比率や計算に影響が出るため、慎重な計画が必要です。
6. 非支配株主と関連する概念
(1) 親会社株主持分
親会社が保有する子会社の持分。非支配株主持分と合わせて子会社の純資産を構成します。
(2) 支配力基準
親会社が子会社を支配しているかどうかを判断する基準。議決権の過半数を保有している場合が一般的です。
(3) 持分法
子会社ではないが、一定の影響力を持つ企業に対する投資を会計処理する方法。
まとめ
非支配株主は、連結財務諸表において親会社グループの利益や純資産を区分する上で重要な概念です。適切な管理と会計処理を行うことで、企業グループ全体の財務状況を正確に反映することが可能になります。
非支配株主に関する具体的な処理や判断が必要な場合は、税理士や会計士などの専門家に相談することをおすすめします。
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