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■引用原文(日本語訳)
「解脱を望む人々は、『タット』と〔念じて〕、果報を意図しないで、祭祀と苦行の諸行為や、種々の布施の行為を行う。」
――『バガヴァッド・ギーター』第17章 第25節
■逐語訳
解脱(モークシャ)を目指す者たちは、
「タット(それ/至高存在)」と心に念じ、
その行為の結果(果報)を望まず、
祭祀(ヤッニャ)、苦行(タパス)、さまざまな布施(ダーナ)を
私心なく捧げるのである。
■用語解説
- タット(TAT):「それ(至高の存在)」を意味するサンスクリット語。自我を超えた存在、ブラフマンへの捧げものを象徴。
- 果報を意図しない(アファラープシプサヤー):功徳や報酬、称賛などの結果を期待せずに行為すること。
- 解脱(モークシャ):束縛・苦悩・輪廻からの解放を意味する、インド哲学における究極目的。
- タットと念じて行う:すべての行為を「自分のため」でなく、「それ(至高存在)」に向けて行う姿勢。
- 祭祀・苦行・布施:神への儀礼、自律的修養、他者への奉仕という三つの徳行。
■全体の現代語訳(まとめ)
解脱(魂の自由)を目指す人々は、
「これはすべて至高の存在=“それ”への捧げものである」と意識し、
いかなる報酬も期待することなく、
祭祀・苦行・布施といった行為を誠実に無私の心で行う。
■解釈と現代的意義
この節は、「真に高貴な行為とは、私心を捨てて“より大きな存在”に捧げるように行うべきものである」という教えです。
「タット」とは「それ=神・宇宙・真理」――それに帰属し、自己の所有や利益を超えて行為を捧げるとき、行為は神聖さを帯びます。
現代的には、「誰かのため」「社会のため」「志のため」という視点で動くことこそが、
自己を超えた働きとなり、心を自由にし、深い満足を生む源になるという教訓です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
志のある働き方 | 給与や評価のためだけでなく、「これは人のためになる」「社会的に意味がある」と考えて行う仕事は、高いモチベーションと持続力を生む。 |
無私の貢献文化 | 成果や見返りを期待せず、自発的に助け合う文化は、組織の徳性と結束力を育てる。 |
ミッション・ドリブンな経営 | 売上や数字以上に、「この事業は何のために存在するのか」を明確に意識して運営する企業は、信頼と長期的成果を得やすい。 |
自己超越型リーダーシップ | 「この働きは“自分のため”ではなく、“より大きなもの”のため」――その意識を持つリーダーは、謙虚かつ力強く、組織を導く。 |
■心得まとめ
「“私”のためでなく、“それ”のために行え」
行為を自分の利益や承認のために行うのではなく、
真理・社会・使命といった“より大きな存在”に捧げる意識で取り組むとき、
その行動は魂を自由にし、心の平安をもたらす。
ビジネスにおいても、「これは“それ”のため」と思える仕事が、最も深く、最も尊い。
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