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身内を律せぬ者に、国を治める資格なし

—一時の情より、永続の制度を守れ

太宗は、皇族の義父・楊誉が下働きの婢をめぐって騒動を起こし、官吏の薛仁方が法に従って取り調べたことに腹を立て、薛を罰した。
それに対して魏徴は、「身内を特別扱いすれば、国の統制は失われる」と直諫する。

「狐やネズミのような小者でも、拠りどころがあると駆除しづらい。ましてや皇族・外戚となれば、その害は計り知れない」と。
太宗はこの進言に反省し、薛仁方の処分を軽減した。


原文(ふりがな付き引用)

「社鼠(しゃそ)・城狐(じょうこ)みな取(と)るに足(た)らざる物(もの)なれども、これに凭恃(ひょうし)有(あ)れば、除(のぞ)くこと容易(ようい)にあらず。
況(いわ)んや世家(せいか)・貴戚(きせき)、古(いにしえ)より理(おさ)め難(がた)しと称(しょう)せらる。

自(おの)ずから備(そな)えて豫(あらかじ)め防(ふせ)ぐは、国(くに)の常(つね)の道(みち)なり。
水(みず)未(いま)だ横流(おうりゅう)せざるを以(も)って、便(すなわ)ち堤防(ていぼう)を自(みずか)ら毀(こぼ)たんと欲(ほっ)すべけんや」


注釈

  • 社鼠(しゃそ)・城狐(じょうこ):神社に棲むネズミ、城壁に巣食うキツネ。表だって害はないように見えるが、駆除が難しく、長く放置すれば禍根となるもののたとえ。
  • 外戚(がいせき):皇后や妃の一族。しばしば権力を振りかざし政治を乱す存在。
  • 堤防を毀す:今は問題がなくとも、将来に備える制度や法を壊すなという比喩。
  • 専権(せんけん):職務の範囲を越えて独断で判断・行動すること。

教訓の核心

  • 親族・身内に対してこそ、公正さが問われる。
  • 一人の外戚を特別扱いすれば、国家の統治機構は徐々に崩れる。
  • 規律とは、「今」が平穏でも、「未来」に備えて保たねばならない防波堤である。
  • 為政者は情に流されず、「制度」と「綱紀」の守護者であるべき。

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