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成長に終わりはない

― 謙虚さと寛容さが、真の学びと徳を導く

曾子(そうし)は、自らの親友であった顔回(がんかい)を偲んで語った。

能力がある者が、自分より劣る者にも素直に学ぼうとする。
知識がある者が、知識の乏しい者にも謙虚に尋ねる。
すでに徳を備えた者が、自らをさらに磨こうと努力する。
他人から侮辱されても、決して争わず、仕返しもしない。

――こうした姿勢を、曾子は「吾が友」すなわち顔回が実践していたと振り返る。

それは、「自分はもう十分だ」と思わない心。
学びにも人格にも、完成はない
たゆまず学び、争わず、人に敬意を持ち続けること。
それこそが、人格者の歩むべき道である。


原文と読み下し

曾子(そうし)曰(い)わく、能(のう)を以(もっ)て不能(ふのう)に問(と)い、多(おお)きを以て寡(すく)きに問う。有(あ)れども無(な)きがごとく、実(み)てれども虚(むな)しきがごとし。犯(おか)されるも校(むく)いず。昔(むかし)者(は)、吾(わ)が友、嘗(かつ)て斯(ここ)に従事(じゅうじ)したりき。


注釈

  • 能を以て不能に問い:自分に能力があっても、能力が劣る者にも教えを請う姿勢。
  • 多きを以て寡きに問う:知識があっても、少ない者にも学ぶ謙虚さ。
  • 有れども無きがごとく、実てれども虚しきがごとし:有能・実力者であっても、それを誇らず控えめにふるまう。
  • 犯されるも校せず:侮辱や争いを受けても、それに報復せず、対抗しない。寛容さの表現。
  • 吾が友:ここでは孔子の高弟・**顔回(がんかい)**を指すとされる。人格・学問ともに優れた人物。

原文:

曾子曰、以能問於不能、以多問於寡、有若無、實若虛、犯而不校、昔者吾友嘗從事於斯矣。


書き下し文:

曾子(そうし)曰(いわ)く、能(よ)くするを以(もっ)て不能(ふのう)に問(と)い、多(おお)きを以て寡(すくな)きに問う。
有(あ)れども無(な)きがごとく、実(み)てれども虚(むな)しきがごとし。犯(おか)されるも校(せ)ず。
昔(むかし)、吾(わ)が友(とも)、嘗(かつ)て斯(ここ)に従事(じゅうじ)したりき。


現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  • 「以能問於不能」
     → 自分ができることでも、できない人に尋ねる(謙虚な姿勢を持つ)。
  • 「以多問於寡」
     → 多く知っていても、知識の少ない人に尋ねる(相手を尊重する)。
  • 「有若無、実若虚」
     → あっても無いようにふるまい、満ちていても空のように謙虚である。
  • 「犯而不校」
     → 他人に過ちを犯されても、言い返したり、争ったりしない。
  • 「昔者吾友嘗從事於斯矣」
     → 昔、私の友人がこのような徳を実践していた。

用語解説:

  • 能を以て不能に問う:自分ができることであっても、それを知らない人にも謙虚に尋ねること。慢心を避ける姿勢。
  • 有若無・実若虚:謙虚さの極致。知識や能力があっても、それをひけらかさず控えめに振る舞う。
  • 校(せ)ず:言い争わない、やり返さない。寛容の美徳。
  • 吾友(ごゆう):ここでは孔子のことを指すとされる。
  • 斯に従事(ここにじゅうじ)したりき:「このような実践に努めていた」という意味。

全体の現代語訳(まとめ):

曾子はこう言った:

「自分ができることであっても、できない人に尋ねる。
多く知っていても、知識の少ない人にも問いかける。
持っていても持たぬように振る舞い、満ちていても空のように謙虚である。
他人に失礼されても、争わない。
昔、私の友人(孔子)は、このような徳の実践に努めていた。」


解釈と現代的意義:

この章句は、**「徹底した謙虚さと寛容さ」**という人格的理想を説いたものです。

曾子は、師・孔子の人柄を思い起こしながら、「どれほど能力があり、知識が豊富でも、それを自慢せず、むしろ相手に学ぶ姿勢を持ち続けること」「侮辱を受けても対抗せず、人格の高さで受け流すこと」が真の徳だと強調しています。

これは、謙遜・敬意・寛容の三徳を具体的に表現した名言です。


ビジネスにおける解釈と適用:

1. 「知識や能力を誇らないリーダーが、信頼される」

  • 部下や後輩に対しても、教える一方で「学ぼうとする姿勢」を見せることが尊敬を生む。
  • 真に優れた人ほど、自分の知識を押しつけず、他者に学ぼうとする余裕がある。

2. 「謙虚さは、組織の空気をやわらかくする」

  • 「できる人」が謙虚であると、周囲は安心し、自由に意見を言いやすくなる。
  • 「知っていても聞く」「持っていても見せびらかさない」ことが、健全なチームづくりの鍵。

3. 「批判に耐えることが、人格を示す」

  • 誤解や非難を受けた時に感情で返さず、冷静でいることは、徳の高さの証明。
  • 苦言や反対意見を“個人攻撃”と捉えず、組織の改善に活かせる器の大きさが、リーダーシップを支える。

ビジネス用心得タイトル:

「できても問う、満ちても控える、責められても争わず──“謙虚と寛容”が人を導く」


この章句は、組織内での信頼関係構築・リーダーの姿勢・謙虚な学びの精神を示す優れた規範です。

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