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257 家族への敬いは、沈黙にあらわれる

身内を語らず、身内を貶さず――それが真の孝行

孔子は、弟子の閔子騫(びんしけん)についてこう称えた。
「なんと孝行な者だろう。彼の父母や兄弟を悪く言う者は誰もいない――なぜなら、彼自身が決して身内の悪口を言わないからだ」

人はつい、家族のことで不満を口にしたくなる。
ときには理不尽に思える出来事があっても、口にすることでその関係性を損ねてしまうこともある。

閔子騫は、継母から冷遇されても、決して母を責めなかった。
他人に家族を批判させるような言動を慎み、沈黙のうちに孝を尽くした。
その姿はやがて継母の心を動かし、家族のあり方までを変えていったという。

口を慎むこと――それは、敬意と愛情をもって人を守る行為でもある。
孔子はその姿勢に、真の孝行を見出したのだ。


引用(ふりがな付き)

子(し)曰(い)わく、孝(こう)なるかな、閔子騫(びんしけん)。
人(ひと)、其(そ)の父母(ふぼ)・昆弟(こんてい)を間(そし)るの言(ことば)あらず。


注釈

  • 閔子騫(びんしけん):孔子の高弟。義母に冷遇されても怨まず、家族を敬い続けたことで後世に孝の模範として称えられた人物。
  • 孝(こう):親への敬愛・奉仕の心。儒教において最も重んじられる徳のひとつ。
  • 昆弟(こんてい):兄弟のこと。
  • 間(そし)る:悪口を言う、非難する意。
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