――責任なき言葉は、正義ではなく混乱を招く
孔子は、**組織や政治における「責任と発言の関係」**について、きっぱりとこう述べました。
「其(そ)の位(くらい)に在(あ)らざれば、其の政(まつりごと)を謀(はか)らず。」
これは、「自分がその職責を担っていないならば、その職務についてあれこれ口出ししてはならない」という厳格な態度を示す言葉です。
つまり――
- 役職や責任がないのに、他人の仕事や政策について批判・干渉すべきではない。
- 現場の実情や責任の重さを知らずに発する意見は、たいてい浅く、無責任になりがち。
孔子は、発言と責任を一体のものとして考える姿勢を持ち、
言論の正義よりも、節度と自覚ある沈黙の方が尊いとする立場をとっています。
原文とふりがな付き引用:
「子(し)曰(いわ)く、
其(そ)の位(くらい)に在(あ)らざれば、其の政(まつりごと)を謀(はか)らず。」
注釈:
- 位に在らざる者 … その仕事や責任を担う立場にない者。現職者でない、部外者。
- 政を謀らず … 政務について意見を述べたり、関与したりしないこと。
- 謀(はか)る … 策を練る、議論する、干渉するの意。
教訓:
この章句は、「発言する権利」と「責任を負う立場」とを明確に結びつける思想を説いています。
- 口を出すなら、責任を取る覚悟を持て。
- 責任を負っていないなら、静かに見守る慎みを持て。
現代社会ではSNSや職場でも、部外者が無責任に意見を述べることがしばしば見られますが、
孔子のこの一言は、言葉の節度と責任ある行動の大切さを教えてくれる金言です。
1. 原文
子曰、不在其位、不謀其政也。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、其(そ)の位(くらい)に在(あ)らざれば、其の政(まつりごと)を謀(はか)らず。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
「子曰く、其の位に在らざれば」
→ 孔子は言った。「その役職・立場に就いていないのであれば」
「其の政を謀らず」
→ 「その職責に関わる政治・業務について口出しすべきではない。」
4. 用語解説
- 位(くらい):職位・役職・立場を指す。自らに与えられた責任領域。
- 政(まつりごと):政治、または具体的な行政・統治行為。広くは“責務・業務”のこと。
- 謀る(はかる):計画する、指図する、口出しする、意見を述べる。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「その職位・役割についていない者が、その責任分野に関わることについて勝手に意見すべきではない。」
6. 解釈と現代的意義
この章句は、「分を守る」「役割を自覚する」ことの大切さを説いています。
- 責任のない立場で、他者の仕事に軽々しく口を出すことを戒めている。
- これは単なる消極性のすすめではなく、**「責任を取れないなら、軽々しく語るな」**という厳格な自律の精神。
- 同時に、自分の職責に集中し、専門性を全うせよという積極的意味も含んでいます。
7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)
✅「職務権限外のことに軽々しく意見してはならない」
- 自分の担当範囲や職責にないことについて、中途半端に口出しすることで混乱や不信を招く。
- 「その立場にない人間が、なぜ勝手に決めるのか?」という反発を生む危険がある。
✅「“責任ある発言”をする姿勢が信頼を生む」
- 発言には常に責任が伴う。「言うからにはやり抜く」という覚悟のある人間こそが、信頼されるリーダーや専門家になる。
✅「口を出すより、自分の立場でできる最大限を果たせ」
- 他部署への不満よりも、自部署での貢献を通じて信頼と影響力を得る方が建設的。
- “立場を守り、誠実に全うする”ことが組織全体の健全性につながる。
8. ビジネス用の心得タイトル
「口より行動、職責を越えた批評は信頼を損なう」
この章句は、現代においても、「専門性と権限」「役割と責任」のバランスを考えるうえで
非常に示唆に富んでいます。
組織を良くするのは、“自分の持ち場を全うする人”の集合体である──
それが孔子の伝える、理想的な組織のあり方です。
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