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自分の正しい道を、他人に合わせて曲げてはならない

孟子は、社会が安定していて道義が世の中に行き渡っているときには、自ら世に出て、その「道(正義・仁義)」を実践するべきだと説いた。しかし、もし天下が乱れ、道が行われていないような状況であれば、自ら身を引き、道を守りながら生きるべきであるとも語る。

つまり、状況によって「道を実践する」か「道を守る」かの形は変わっても、常に大切なのは“道”そのものであり、決して自分の道を他人に合わせて捨ててはならないということである。

「孟子曰く、天下道有れば、道を以て身に殉え、天下道無ければ、身を以て道に殉う。未だ道を以て人に殉う者を聞かざるなり」

「世の中に正義が行き渡っているときは、自ら進んでその道を行う。世が乱れ、道が行われていないときは、身を引いて道を守る。だが、自分の正しい道を、他人に合わせて犠牲にした者など、私は聞いたことがない

孟子のこの教えは、たとえ権力や世間の風潮がどれほど強くても、それによって自分の「正しい信念」を曲げてはならないという、強い倫理的姿勢を示している。

※注:

  • 「殉(じゅん)」…身を捧げる、従わせる。
  • 「道」…仁義・礼智・誠など、儒教における正しい生き方の根本。
  • 『論語』にも、「天下道あれば則ち見れ、道なければ則ち隠る」とあり、孟子の思想と一貫している。
目次

『孟子』離婁章句下より

1. 原文

孟子曰、天下有道、以道殉身、天下無道、以身殉道、未聞以道殉乎人者也。


2. 書き下し文

孟子曰く、天下に道有れば、道を以て身に殉(したが)え。
天下に道無ければ、身を以て道に殉(したが)う。
未だ道を以て人に殉う者を聞かざるなり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「天下に道があるときは、道をもって自分の身を守り生きればよい」
     → 社会が正しく整っていれば、道に従って安心して生活すればよい。
  • 「天下に道がないときは、自分の身をもって道に殉うべきである」
     → 社会が乱れていても、正しい道を守るために、命を懸けてでも尽くすべき。
  • 「まだ、“正しい道を人に従わせるために犠牲にする”という話は聞いたことがない」
     → 道(正義)は、人の都合に合わせて捨ててよいものではない。

4. 用語解説

  • 道(みち):倫理・正義・人としての正しい在り方を意味する。儒家においては天の理とも結びつく。
  • 殉(じゅん)う:何かに殉ずる、身を捧げる。忠義や理念への自己犠牲的な献身を表す。
  • 天下有道/無道:社会全体が正義にかなっている(有道)か、混乱している(無道)かの判断。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孟子はこう言った:

「天下が正しい道理に従っているときには、自分はその道に従って生きればよい。
しかし、もし社会が不正や混乱に満ちているならば、自分の身を賭けてでも道を守らなければならない。
正しい道を、人の都合や欲望に合わせて犠牲にしてよいという話は、聞いたことがない。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、孟子が貫いた**“道の絶対性”と“自己犠牲による実践”**を最も端的に語るものです。

  • 「世の中が正しければ、素直に従えばよい」
     平和なときは、身を守るために道を使えばいい。
  • 「世が乱れているときこそ、道を守るために自らを犠牲にせよ」
     不正義の中にいても、正義を曲げてはいけない。自分を犠牲にしてでも守る価値がある。
  • 「“道”を犠牲にしてまで人に合わせることは間違い」
     妥協・迎合・忖度ではなく、正しい道の維持こそが優先されるべきである。

7. ビジネスにおける解釈と適用

✅ 「正しい原則を、人や組織の都合で曲げるな」

  • 正しい理念があるときは、それに沿って会社や社員が行動すればよい。
  • 組織が腐敗しているときは、理念のために自らが戦う覚悟が必要。
  • 「社長がそう言ったから」「顧客が望んだから」といって、原則を破るのは“道を殉ずる”のではなく“売る”ことである。

✅ 「価値ある企業文化は、守り抜いてこそ意味がある」

  • ミッション・ビジョン・行動規範など、理念が“空文化”しないように実践で支える必要がある。
  • 苦しいときでも守られる文化が、本当の“道”として人を動かす。

8. ビジネス用の心得タイトル

「正義を犠牲にするな──道を守る者が人を導く」


この章句は、「信念」「倫理」「信頼」「誠実さ」という現代ビジネスにおける根幹の価値を支える力強い言葉です。
あなたが信じる“道”を貫く勇気を持つこと──それが、最終的には人々を動かし、組織を変え、社会を良くすることにつながります。

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