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与えられぬものには、いかなる価値があれど、決して手を出さぬ心


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■引用原文(日本語訳)

この世において、長くとも短くとも、
微細であっても粗大であっても、
清らかであろうと不浄であろうと、
いかなるものであれ与えられていない物を決して取らない者――
その人を、私は〈バラモン〉と呼ぶ。

(『ダンマパダ』第409偈|第二六章「バラモン」)


■逐語訳

  • Na heṭhato na uddhaṃ vā:下であれ上であれ(=どんな立場・程度のものであれ)
  • Tiriyaṃ vāpi majjhato:あるいは横にあっても、中心にあっても
  • Sabbato parigahitaṃ:あらゆるところから取られたものであっても
  • Na ādiyati pāpakaṃ:その人は悪しきもの(=盗み、非道)を取らない
  • Tam ahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ:そのような人を、私は〈バラモン〉と呼ぶ

■用語解説

  • 与えられていない物(adinna):本人の承諾なく、許可されていない所有物・情報・機会など。
  • 微細でも粗大でも:物の大小・価値の高低に関わらず、欲望に支配されない姿勢を表す。
  • 清浄/不浄(suci/asuci):社会的に善悪とされる性質にかかわらず、不正の手段を取らない意志の強さ。
  • 〈バラモン〉:欲望や損得を超え、倫理と真心で行動する清らかな人格者。

■全体の現代語訳(まとめ)

その人は、どんなに小さなものであっても、
どんなに立派であっても、汚れていても、
自分に与えられていないものを
決して手に取ることがない。
そのような無欲と誠実を徹底した人を、
仏陀は〈バラモン〉と呼ぶ。


■解釈と現代的意義

この偈は、**「道徳心は行為の大小で判断されるものではない」**という、極めて現代的な倫理感を提示しています。
「これくらいならいいだろう」「バレなければ問題ない」――そうした心理を厳しく戒め、
どんなに小さな盗みや不正も行わない人間が、真の高貴さを持つとされます。

この態度は単なる清貧ではなく、
自己の内面と一貫性を保つための毅然とした誓いです。
どれほど魅力的であっても、自分のものでなければ取らない。
それが、信頼と尊敬を築く真の人格の基礎なのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
コンプライアンス遵守小さな利益でも、未許可のデータ取得・経費の水増し・情報の流用をせず、常に透明な行動を取る。
信頼されるプロフェッショナリズム「この人は決して不正をしない」という信頼が、長期的な信用や紹介・推薦につながる。
小さな誠実の積み重ねゴミ拾いや返事・資料引用など、見えにくい誠実さが組織文化を作る。
無欲な姿勢与えられていないチャンスや功績を「横取り」せず、正当に評価を得る姿勢が結果として周囲の評価を高める。

■心得まとめ

「たとえ一粒の米であっても、己に属さぬものは手にしない」
小さきものも、大ききものも、
美しきものも、醜きものも――
それが誰かのものであれば、
決して取らない。
その無欲と誠実を貫く者こそ、
真に自由で、尊ばれる存在となる。
ビジネスにおいても同じ。
ルールを守るのは当然。
だが、誰も見ていない場面でも、
己が誠を貫けるか――
そこに、真の〈バラモン〉が現れる。


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