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地位のために志を変えてはいけない

孟子は、柳下恵が三公という高い地位を得るか失うかに関わらず、自分の生き方や考え方、行動を変えなかったことを称賛した。柳下恵は、地位や名声を追い求めることなく、常に自分の信念を守り続け、外部の影響に流されることはなかった。孟子は、地位や権力のために自分の志や信念を変えることは、決してすべきではないと教えている。

「孟子曰(もうし)く、柳下恵は、三公を以て其の介を易えず」

「柳下恵は、三公の地位を得るか失うかという問題があっても、自分の生き方、考え方、行動を決して変えることはなかった」

孟子は、地位や状況に流されることなく、志を貫くことこそが真の人間の生き方であると強調した。

※注:

「三公」…太師・太傅・太保のこと。天子を補佐する最高位の官職。
「介」…生き方、考え方、行動、または信念や操守を指す。

目次

『孟子』離婁章句上より

1. 原文

孟子曰、柳下惠、不以三公易其介。


2. 書き下し文

孟子曰(いわ)く、柳下恵(りゅうかけい)は、三公を以て其の介(かい)を易(か)えず。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「柳下恵は、三公という高い地位をもってしても、自分の節義を変えることはなかった。」
     → 柳下恵という人物は、自らの一貫した節義・信念を、高官の地位をもってしても手放すことはなかった。

4. 用語解説

  • 柳下惠(りゅうかけい):春秋時代の魯の賢者。人格高潔で、どのような状況にあっても礼を失わず、節義を守った人物として孔子・孟子に高く評価されている。
  • 三公(さんこう):古代中国の最高官職三位(太師・太傅・太保、または太尉・司徒・司空など)。国家権力の頂点を象徴する。
  • 介(かい):節義、慎み深さ、信念、一貫した人格のこと。「介然として易えず」とも用いられる言葉で、動じない態度を意味する。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孟子はこう言った:
柳下恵という人物は、どれほど高い官職であっても、自らの信念や節義を曲げることはなかった。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「誠実な生き方は、地位や名誉よりも重い」**という孟子の信念を象徴しています。

  • 柳下恵は、どんなに権力や地位を与えられようとも、自分の中にある「正しいと思うこと」「貫いてきた信念」を手放さなかった。
  • 孟子がこの人物を称えるのは、時代や環境に流されずに自己を律することこそが君子(理想の人間)の姿であると考えたからです。
  • 「三公」は外的な評価・報酬、「介」は内的な信念・道徳の象徴です。孟子は「介」の方を明らかに尊重しているのです。

7. ビジネスにおける解釈と適用

✅ 「地位や報酬では揺るがない“信念”を持て」

昇進・年収・名誉といった外的な報酬の前に、自分の信念や倫理を譲らない姿勢が、長期的な信頼と尊敬を生む。

✅ 「組織に迎合せず、自律的な判断を」

経営判断や社内政治の中でも、短期的な損得で動くのではなく、正しいと信じる道を貫く人物が組織の“背骨”となる。

✅ 「“介”=一貫性は最強のブランド資産」

個人でも企業でも、“変わらない核”がある者が信用される。特にリーダーは、何を大切にしているかが一貫していることで人を動かせる。


8. ビジネス用の心得タイトル

「信念は役職より重し──“介を易えず”が真の信頼をつくる」


この章句は、地位よりも志・誠よりも表面の利益を求めない生き方の尊さを短く端的に語っています。現代社会においても、政治・経営・個人の在り方に鋭い指針を与えるものです。

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