非支配株主に帰属する当期純損益とは、子会社が計上した当期純損益のうち、親会社が支配していない持分(非支配株主持分)に帰属する部分を指します。これは、連結損益計算書において「親会社株主に帰属する当期純損益」と区別して表示されます。
1. 非支配株主に帰属する当期純損益とは?
定義
連結決算では、グループ全体の損益を親会社株主と非支配株主に分けて計算・表示します。この際、子会社の純損益のうち、非支配株主持分に対応する部分を「非支配株主に帰属する当期純損益」と呼びます。
表示
- 連結損益計算書の下部に、「親会社株主に帰属する当期純損益」と「非支配株主に帰属する当期純損益」として区分表示されます。
- これにより、親会社株主が直接享受できる利益と非支配株主に帰属する利益が明確になります。
2. 計算方法
基本式
[
非支配株主に帰属する当期純損益 = 子会社の当期純損益 × 非支配株主持分比率
]
計算例
- 子会社の当期純利益:2,000万円
- 非支配株主持分比率:25%
計算:
[
非支配株主に帰属する当期純損益 = 2,000万円 × 25\% = 500万円
]
ケース:子会社が当期純損失を計上した場合
- 子会社の当期純損失:▲1,000万円
- 非支配株主持分比率:30%
計算:
[
非支配株主に帰属する当期純損益 = ▲1,000万円 × 30\% = ▲300万円
]
この場合、非支配株主も損失を負担する形となり、連結損益計算書では「非支配株主に帰属する当期純損失」として表示されます。
3. 会計処理
連結損益計算書での区分表示
- 子会社の損益を親会社と非支配株主の持分に分け、明確に表示します。
- 表示例:
当期純損益: 1,500万円
├─ 親会社株主に帰属する当期純利益:1,000万円
├─ 非支配株主に帰属する当期純利益:500万円
仕訳例
- 子会社の当期純利益:2,000万円
- 非支配株主持分比率:25%
仕訳
借方:当期純利益 2,000万円
貸方:親会社株主に帰属する当期純利益 1,500万円
貸方:非支配株主に帰属する当期純利益 500万円
4. 注意点
(1) 非支配株主持分比率の変動
- 非支配株主持分比率が期中で変動する場合、損益計算にも影響します。
- 期中平均の持分比率を用いる場合が多いですが、状況に応じて調整が必要です。
(2) 子会社の損失計上時の影響
- 子会社が損失を計上すると、非支配株主もその損失の一部を負担します。ただし、非支配株主持分がゼロまたはマイナスになる場合の処理は、個別の状況に応じた判断が必要です。
(3) 連結財務諸表の一貫性
- 非支配株主に帰属する損益は、連結財務諸表全体で一貫性を保つ必要があります。特に、親会社株主に帰属する損益との合計が子会社の当期純損益と一致することを確認してください。
5. 非支配株主に帰属する当期純損益の影響
(1) 投資家の評価
- 親会社株主に帰属する利益が多いほど、親会社の収益力が高く評価されます。
- 非支配株主持分が高いと、親会社の利益貢献が薄まるため、投資家が注意を払うポイントとなります。
(2) 連結財務諸表の複雑化
- 非支配株主の損益分配を正確に反映することで、財務諸表が複雑になる可能性があります。
(3) グループ経営の影響
- 子会社の業績が悪化すると、非支配株主との関係管理が難しくなる場合があります。
6. 非支配株主に帰属する損益の表示例
表示例:連結損益計算書(簡略版)
売上高 10億円
営業利益 2億円
経常利益 1.8億円
税引前当期純利益 1.6億円
当期純利益 1.2億円
└─ 親会社株主に帰属する当期純利益:0.9億円
└─ 非支配株主に帰属する当期純利益:0.3億円
まとめ
非支配株主に帰属する当期純損益は、子会社の純損益を親会社株主と非支配株主に適切に分配し、連結財務諸表に反映させる重要な要素です。非支配株主の比率や損益状況を正確に計算し、連結決算での整合性を保つことが求められます。
計算や会計処理が複雑な場合は、税理士や会計士に相談することをおすすめします。
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