MENU

客層を絞る

目次

1. 客層を絞る重要性

毛糸問屋のT商事は、新事業を次々と開拓し、業績を向上させている。その新事業の一つとして成功を収めたのが、婦人服の現金卸である。

当初、店長に仕入れを一任していた(実際は放任状態だった)。店長は「できるだけ多くの種類を揃えることが販売を伸ばす道だ」と考え、「何でもかんでも」扱おうとした。

お客様に「これこれの品物はありますか?」と尋ねられて、それがないと「しまった、早速仕入れなければ」と考え、さらに仕入れを増やしていった。その結果、取り扱う種類は際限なく増え続けていったのである。

しかし、店舗の面積には限りがあるため、品目を増やすほど一つ一つの商品のサイズやデザインが貧弱になっていく。

お客様が本当に求めているのは、すべての品が揃っていることではなく、自分が買いたい商品が豊富に揃っていることだ。多くの商品を見比べ、その中から自分の気に入ったものを選びたいのである。

何もかも揃えようとすると、どの商品もお客様の求めるような充実した品揃えにはならなくなってしまう。

店長の誤った「何でもかんでも」主義の結果、売上は思うように伸びなかったのは当然のことである。

開店当初は「まだ始めたばかりだから」と見過ごされていたが、一向に売上が伸びない状況が続いた。ついに我慢しきれなくなった常務のS氏が自ら店長となり、店舗に足を運んで驚いた。「これでは売れるはずがない」と判断し、直ちに改革に乗り出したのである。

まず、「中年婦人向けの実用高級品」という基本方針を打ち出し、商品もスーツ、セーター、スカートのみに限定した。

その結果、商品が充実し、「中年向けならT商事へ行け」という評価をお客様から得られるようになった。売上が格段に上昇したのは言うまでもない。

S社はヤング向けの個性に焦点を絞り、独自のファッション性を打ち出して成功している。K商店はクインサイズのスーツに特化し、全国に百以上のクインサイズ専門の特約店を展開している。街を歩けば、メンズウェア専門店やベビー用品専門店にも出会うことがある。

顧客の要求に基づく経営

いずれのケースでも、特定の客層に絞り、その層の多様なニーズを満たそうとする発想が根底にある。つまり、常に「顧客の要求」に焦点を合わせているのである。

顧客の要求は何か。顧客がどのような買い方をするのかを徹底的に研究し、それに基づいて自社の経営方針を決めることこそが重要である。

顧客の立場に立たず、自社の視点だけで自己満足の経営を行っていては、業績の向上は期待できないことを肝に銘じるべきである。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次