目次
📜 原文(第51節)
妄想して考え出された現象界もなく、
個人存在の連続もなく、
障害もなくなって、
はたらきのなくなった人、
愛執を離れて行じている聖者を、
神々も世人も、それだと識ることがない。
🔍 用語解説
表現 | 解釈 |
---|---|
妄想して考え出された現象界 | 諸法(現象)の虚構性。執着により「在る」と信じ込んでいるものの真の姿。 |
個人存在の連続 | アートマン(恒常的自我)という錯覚。仏教的には五蘊の仮和合でしかない。 |
障害 | 心の煩悩、あるいは悟りを妨げる「我執・無知」など。 |
はたらきのなくなった人 | 意図的なカルマ(行為)を超え、行動が自然流転のなかにある人。 |
愛執を離れて行じている聖者 | 動機に私情がなく、欲望からも自由なまま修行と生活を続ける人。 |
識ることがない | 世間的な「肩書・実績・見た目」では識別できない本質的な存在。 |
🧠 解釈と現代的意義
この句は、「完全な解脱者は、もはや人知を超えた存在である」という教えです。
- 世の人々は「見える行為」や「語られる教え」から聖者を判断しようとしますが、
- 真の聖者は、それらのすべてを脱ぎ捨て、もはや「名」や「姿」にとらわれません。
結果、彼が聖者であることさえ、他人にはわからないのです。
まさに「徳は隠れて香る」という理想像です。
💼 ビジネスへの応用と視点
観点 | 応用と実践例 |
---|---|
リーダーの在り方 | 表面的なカリスマ性ではなく、無言実行の影響力が真のリーダーシップを生む。 |
ブランディングの逆説 | 「見せないこと」「語らないこと」が時として最も深い信頼を生む(例:職人気質の仕事)。 |
人事評価制度 | 数値化できない行為や、目立たない貢献を正しく捉える視座が求められる。 |
個人のマインドセット | 他人に理解されることよりも、「愛執を離れて行ずる」という姿勢に価値を置くべきである。 |
✅ 心得まとめ
「知られぬほどに聖者は清く、評価されぬほどに偉大である」
外に示さず、
語らず、飾らず、
ただ静かに
愛執なき行いを行ずる人。神々すらもその本質を識らぬほど、
名もなき聖者こそ最も高みにある。――己を語る者ではなく、忘れられる者こそ完成者である。
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