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■引用原文(日本語訳)
あさはかな愚人どもは、自己に対して仇敵に対するようにふるまう。
悪い行ないをして、苦い果実をむすぶ。
——『ダンマパダ』第5章 第66偈
■逐語訳
- あさはかな愚人どもは:深い考えもなく行動する無知な人々は、
- 自己に対して仇敵に対するようにふるまう:まるで自分自身を敵であるかのように害をなす。
- 悪い行ないをして:身体・言葉・心において悪業(アクサラ)を積み、
- 苦い果実をむすぶ:その結果として苦しみを収穫する。
■用語解説
- 愚人(バーラ):因果の法則を知らず、自分の行いがもたらす結果を理解しない者。
- 仇敵(しゅうてき):害意をもって攻撃してくる存在。ここでは自分自身への害を暗示。
- 悪い行ない(アクサラ):道徳に反する行動・言葉・思考。
- 苦い果実:悪業の報いとして現れる苦しみの結果。現世または来世で経験する。
■全体の現代語訳(まとめ)
軽率で愚かな人々は、まるで自分自身を敵のように扱ってしまう。
それは、自分の身を滅ぼすような悪しき行いを重ねてしまうからである。
結果として、彼らは自らまいた種から苦しみという苦い果実を刈り取ることになる。
自分に対して最も残酷なことをするのは、往々にして“自分自身”なのである。
■解釈と現代的意義
この偈は、「自滅的な生き方」への鋭い警鐘です。
人は往々にして、その場の欲望や怒りに支配され、自らの将来や信頼、自尊心を壊すような行動をとってしまいます。
それはまるで、自分を仇と見なし、破滅へ導いているようなものです。
この偈は、自分への真の慈しみとは、長期的な視点で善を選び、悪を避けることにあると説いています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
衝動的な判断 | 怒りに任せて発言したり、無理な契約を進めたりすることで、自らの信頼や評判を損なう。 |
長期視点の欠如 | 短期的な利益を追って不正や無謀な行動をとれば、将来的に大きな損失を招く。 |
自己破壊的行動 | 過労、無理な働き方、無計画な拡張など、自らの健康や組織を壊すような選択。 |
感情優先の経営 | 根拠なき希望や恐れに基づいて意思決定すれば、組織を道連れにする結果となる。 |
■心得まとめ
「愚かさは、己の手で己を滅ぼす」
誰よりも深く自分を傷つけるのは、自分自身の行動である。
目先の快楽や感情に流されて悪業を積めば、それはやがて苦しみという形で自分に戻ってくる。
自分を大切にするとは、未来の自分に恥じぬ行いを選ぶこと――それが本当の慈悲であり、智慧である。
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