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■引用原文(日本語訳)
九*
(自分では)悪いことをしていなくても、悪事をなす人とつき合うならば、同じ悪事をしているのではないかと疑われ、その人に対する悪い評判がたかまる。
――『ダンマパダ』
■逐語訳(意訳を含む)
- 自分自身は悪事を働いていないとしても、
- 悪いことをする人物と交友を結んでいれば、
- 世間からは「同類ではないか」と疑われ、
- 結果としてその人自身にも悪い評判が広がっていく。
■用語解説
- 悪事をなす人(パーパ・カリーナ):非道徳的、違法、不誠実な行為を繰り返す者。
- 疑われる(サンカ):第三者からの信頼や信用に対する疑念。行為ではなく交際相手によって評価が揺らぐ。
- 悪い評判(ドゥッサンカ・キルティ):社会的信用や人格評価の低下。噂や印象によって広がる否定的な評価。
■全体の現代語訳(まとめ)
たとえ自分が正しく生きていても、悪事を行う者と親しくしていれば、自分もまた「同じ穴の狢(むじな)」だと見なされる。
そしてそのような関係が周囲に与える印象によって、自分の信用や評判が下がることすらある。
人は、行いだけでなく「誰と交わるか」によっても評価されているという厳然たる事実を忘れてはならない。
■解釈と現代的意義
この章句は、仏教の教えの中でもとりわけ「世俗的信用」に焦点を当てた、きわめて実用的な警句です。
現代でも「朱に交われば赤くなる」「付き合う人を見ればその人がわかる」と言われるように、交友関係は自己の信用や信頼に直結します。
本人に非がなくても、「悪しき人と親しい」というだけで疑われたり、敬遠されたりするのが現実です。
これは倫理だけでなく、社会的・心理的・ビジネス的にも極めて重要な洞察です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
信用管理 | 自社のイメージや評判は、提携先や人脈によっても大きく影響される。信頼性の低い相手との関係はリスク要因となる。 |
人事・採用 | 周囲からの推薦や過去の人間関係を重視するのは、その人物が誰と関わってきたかが、その人自身の信頼度を示すから。 |
リーダーの立ち居振る舞い | 社外の付き合いや個人の交友関係が、組織の顔としての信頼を左右する。 |
ブランドイメージ | たとえ品質や理念が優れていても、不適切な提携やコラボレーションによってブランドが傷つく可能性がある。 |
■心得まとめ(感興のことば)
「人の評価は、己の鏡ではなく、交友の影で決まることもある」
自らに非がなくても、誰と共にあるかで、周囲は己を判断する。
交友は人格を映す鏡。だからこそ、選び取るべきは、徳をともにする関係である。
信頼を築きたければ、まずは信頼に足る人とともに在ることを選べ。
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