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欲望の火に舞う蛾のように――執着は新たな束縛を生む


目次

📜 原文(第二九章 五)

「(経験するものを)実質のある物だと思って、走り近づいて行くが、ただそのたびごとに新しい束縛を身に受けるだけである。暗黒のなかから出て来た蛾が(火の中に)落ちるようなものである。かれらは、見たり聞いたりしたことに心が執著しているのである。」


🔍 逐語解釈と要点

  • 経験するもの:五感を通じて接する対象(色・声・香・味・触)や、外的な経験一般。
  • 実質のある物だと思う:それが本当に価値ある「実体」だと信じてしまう錯覚。
  • 走り近づく:欲望に突き動かされ、無自覚に追い求めてしまう行動。
  • 新しい束縛を受ける:執着することで心が縛られ、さらなる苦しみを生む因果。
  • 蛾が火に落ちる:自己破壊的な衝動のたとえ。見えているのに抗えず、燃え尽きる。
  • 見たり聞いたりしたことに心が執著している:感覚的情報に囚われ、内面の自由を失っている状態。

🧠 解釈と現代的意義

この節は、「感覚や経験の世界に価値があると思い込むことが、どれほど危ういか」を示しています。
私たちは日々、見えるもの・聞こえるもの・得られる体験に惹かれ、それを「実体のある価値」だと思って追い求めてしまいます。

しかし、それらは移ろいやすく、永続する本質ではありません。そのため、それに近づけば近づくほど、新たな執着・欲望・苦悩が生まれるというサイクルに陥ります。

暗闇から出た蛾が、火に引き寄せられて焼け落ちるように、光(快楽)と見えるものの中には、滅び(苦しみ)の種があるのです。


💼 ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
消費とマーケティング「欲望を煽る商品」ばかり追いかける企業は、短期的売上に執着してブランド価値を損なう。
キャリア観名声や報酬といった“火のような輝き”に惹かれて無理を重ねると、心や身体を燃やすことになる。
顧客との関係顧客の声や反応に過度に執着すると、本来の理念や方向性が見失われ、迷走する。
デジタル社会の罠SNSの「見せたい情報」ばかりに反応し、自分の価値を他者評価に委ねると、自由を失い苦悩が増す。

✅ 心得まとめ

「欲望は火、執着はその燃料。知性なくしては身を焼かれる。」

快楽や成功体験に囚われている限り、人は何度でも束縛に縛られ、苦しみの輪廻に陥ります。
目に見えるもの、耳に聞こえるものに心を奪われるのではなく、それを見ている「自分の心」の在り方を見つめることが真の自由への第一歩です。

欲望に向かって無思慮に進むことは、火に飛び込む蛾と変わらない
だからこそ、「本当に価値あるものは何か?」を、深く見極める知性と内省こそが、私たちを束縛から解放するのです。

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