企業経営において、経営方針を全従業員に共有することは重要ですが、単に「伝える」だけでは実際の行動変化にはつながりません。そのためには、従業員が方針を「理解し、意識し、行動に反映させる」仕組みを構築することが必要です。具体的な方法として、以下のような取り組みを実践しています。
朝礼で経営計画書の方針を音読する
経営計画書に記載された方針を徹底するため、朝礼では全従業員が音読を行います。ただし、単に自由に読ませるのではなく、あらかじめ読む項目を指定します。これは、社員が短い文章ばかり選んでしまうことを防ぐためです。たとえば、販売部門の社員には「販売に関する方針」を読ませるよう指示するなど、業務内容に即した項目を選定しています。
また、長文の場合は分割して唱和する形式を取り入れています。こうすることで、内容を反復しやすくし、社員の意識に深く刻み込む効果を狙います。
早朝勉強会で「教える」と「育てる」を両立
方針を朝礼で読んだだけでは、従業員の行動はなかなか変わりません。そのため、次のステップとして早朝勉強会を実施しています。この勉強会は、「教える時間」と「育てる時間」の二部構成で進行します。
1. 教える時間(45分)
勉強会の前半では、経営計画書や「仕事ができる人の心得」をテキストとして使用します。具体的には、実際の業務で起きた失敗事例をもとに方針の解説を行います。抽象的な成功談や外部事例ではなく、身近な失敗事例を共有することでリアリティを高めています。これにより、社員が「自分ごと」として方針を捉えるきっかけを作ります。
2. 育てる時間(15分)
後半では、社員一人ひとりが学んだ内容についてコメントを発表します。これは「自分の言葉で理解する」プロセスを通じて、方針を内面化させるためです。たとえ最初は形式的な発言であっても、反復することで徐々に本質的な理解が深まります。このように、教育を「教える」と「育てる」の両面で強制することが、社員の成長には不可欠です。
経営計画書の「続編」としての用語解説
経営計画書には毎年新しい方針が加わる一方で、古い方針が削除されることもあります。この際、削除された方針が「もう必要ない」と誤解されないように、方針の補足説明として用語解説を作成しています。この用語解説を集約したのが「仕事ができる人の心得」です。
いくつかの重要な用語を以下に紹介します:
- 赤字:経営者の甘えの結果。赤字を許容した経営判断が原因であり、罪悪である。
- 売上:市場活動の指標。収益を判断する際は「粗利益額」を基準とするべき。
- 売上単価:企業の命運を左右する重要事項。値引きの権限は経営者が握るべき。
- 永続:利益追求よりも「つぶれにくい会社作り」を優先する。
- お客様:過去の実績や関係ではなく、「現在の対応」によって評価される存在。
- 借入金:無借金経営が必ずしも正解ではない。経済的なリスクに備えるためには、適切な借入を行うべき。
これらの定義を共有することで、経営方針に対する社員の理解をさらに深めています。
結論
経営方針を徹底するためには、「伝える」だけでは不十分です。朝礼での音読や早朝勉強会、用語解説など、さまざまな手法を組み合わせることで、従業員の行動に変化をもたらします。「教える」と「育てる」の両方を強制的に行う仕組みを通じて、社員一人ひとりが経営方針を実践できる環境を構築することが重要です。
朝礼では強制的に方針を読ませる
制作勉強会で方針が全従業員に伝わります。ところが伝わった気になっただけ。何も変化は起きません。ではどうするか。朝礼で経営計画書の方針を強制的に読ませます。
しかも読む項目を決めておかないと社員は短いところばかり読むので、今日はどこを読むかをあらかじめ決めています。経営計画書の事業年度計画には方針の欄があり、販売なら販売に関する方針を読むと指示しています。
唱和する。長いものは分割する。
早朝勉強会は、教える時間と育てる時間に分けて行う
では朝礼で方針を読めば従業員の行動が変わるかと言えば残念ながら変わりません。
そこで経営計画書と仕事ができる人の心得をテキストにして、早朝勉強会を実施しています。5000回以上。講師は私が務め、私が不在の時はビデオ映像を使用。
勉強時間は毎朝、7時30分から8時半までの1時間。基本的に参加は自由ですが、各個人の出席目標は半期に10回です。前半の45分は小山登による方針の解説。
この時間は教える時間であり、できるだけ社内で実際に起きた実例(失敗例)を題材にしています。
リッツカールトンの話を出しても響かない。上司は昔はこうだったからこういう失敗はしないでおきましょうねというとリアリティーが増す。社員にちょって上司の失敗は蜜の味。
後半の15分は育てる時間と位置付けています。人の話を聞いただけで理解できる社員はいません。ですから説明した用語と方針についてひとりづつコメントを発表する。社員はみんな嘘をつきます。
とても勉強になりました。今後の業務に活かしたいと思います。心にもないことを言い出す。嘘も100回いうと本当になる。
教育は強制することと述べましたが、「教える」と「育てる」の両方を強制することが大切です。多くの会社は教えるだけで育てるがない。育てるがなければ人の成長はありませなん。
用語解説は経営計画書の続編である
新しく加わる方針がある一方で、経営計画書から外した方針もあります。すると、あの方針は経営計画書から外されたのだから、もうやらなくていいんだと思いこむ。経営計画書の続編とも言うべき用語解説を作りました。この用語解説を編さんし直したものが仕事ができる人の心得。
「赤字」・・・社長の甘えです。社長が赤字になってもよいと決定したからです。罪悪です。
「売上」・・・市場活動のものさしです。収益のものさしは粗利益額です。売上が増加しているのは、社長の考えとお客様の考えが一致しているからです。
「売上単価」・・・企業の命運を左右するものです。社長の決定事項でなければならない。値引きを営業マン任せで、放任することは極めて危険です。
「永続」・・・儲かる会社より、つぶれにくい会社を作ること
「お客様」・・・我が社にとって一番大切な人です。過去の実績、人間関係は通用しない。無警告で離れる。今日、今の対応に対して判断されるので、お客様の不満にはすぐに対応する。
「借入金」・・・できるだけ長期で借りる。経済の断層に耐えられる。金利は少々高くてもよい。会社を潰さないことが最優先です。もちろん運転資金も借りる。普通、無借金経営が正しいと思われているが、現金があれば地震が来ようが、何が起きても会社は潰れない。会社の経営は現金にはじまって現金におわる。
コメント