普段から粗食に満足している人は、心が氷のように清らかで、玉のように潔い。
それに対して、美食や贅沢ばかりを求める人は、
やがて権力者や地位ある者に媚びへつらい、自分を安売りするようになる。
人の志は、淡泊で節度ある生活によってこそ輝きを放ち、
逆に節操や気概は、過度なぜいたくの中で失われていくのだ。
飾らない日常の中にこそ、人格は磨かれる。
「藜口莧腸(れいこうけんちょう)の者(もの)は、氷清玉潔(ひょうせいぎょくけつ)多(おお)く、
衮衣玉食(こんいぎょくしょく)の者は、婢膝奴顔(ひしつどがん)を甘(あま)んず。
蓋(けだ)し、志(こころざし)は澹泊(たんぱく)を以(もっ)て明(あき)らかに、
而(しか)して節(せつ)は肥甘(ひかん)よりして喪(うしな)うなり。」
注釈:
- 藜口莧腸(れいこうけんちょう)…野草などを使った粗末な食事。質素な生活を象徴する表現。
- 氷清玉潔(ひょうせいぎょくけつ)…氷のように清らかで、玉のようにけがれない心。人格の純粋さを表す。
- 衮衣玉食(こんいぎょくしょく)…天子の礼服と豪華な食事。贅沢で地位のある生活。
- 婢膝奴顔(ひしつどがん)…卑屈な態度を指す言葉。へりくだり、こびるさま。
- 澹泊(たんぱく)…淡々として欲のないこと。清く控えめな態度。
- 肥甘(ひかん)…ぜいたくな飲食。欲にまみれた暮らしの象徴。
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