目次
📖 原文引用(『ダンマパダ』第二五章 第363偈)
口をつつしみ、思慮して語り、
心が浮わつくことなく、
事がらと真理とを明らかにする修行僧――
かれの説くところは、やさしく甘美である。
(原文:
Vācānurakkhī manasā susamvihito,
sammodamāno abhinīharitvā,
yaṃ ñāṇadassanaṃ atthaṃ panītaṃ,
deseti santusito sa bhikkhu.
―『Dhammapada』Ch. 25, v.363)
🔍 逐語訳(逐文・簡潔)
- Vācā-anurakkhī:言葉を慎む者
- Manasā susamvihito:思慮深く、心をよく整えた者
- Sammodamāno abhinīharitvā:敬意と喜びをもって説き明かす者
- Yaṃ ñāṇadassanaṃ atthaṃ panītaṃ:智慧と見識に基づく、深遠なる真理・利益を
- Deseti santusito sa bhikkhu:それを説く、満ち足りた修行僧
→その人の言葉は、優しく心に沁みわたる。
📘 用語解説
- 口を慎む(vācā-anurakkhī):軽率な発言や余計な言葉を避け、沈黙と発言を峻別する姿勢。
- 思慮して語る(manasā susamvihito):言葉を発する前に、心で十分に準備と配慮をする。
- 心が浮わつかない(sammodamāno):感情に流されたり、軽率に喜怒哀楽に傾かない状態。
- 事がらと真理(ñāṇadassanaṃ atthaṃ):現象の背後にある意味や、深い洞察。真実の核心。
- やさしく甘美な言葉(panītaṃ):強く主張せずとも、静かに人の心を打つ内容ある言葉。
🗣️ 全体の現代語訳(まとめ)
言葉に慎みを持ち、心を整え、
軽率に話すのではなく、しっかり思慮して語り、
感情に流されず、真実と意義あることを静かに説く修行者――
その語るところは、やわらかく、甘美で、心にしみわたる。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、「言葉の力」と「語る者の姿勢」について、仏教的な理想を示しています。
真に意味ある言葉は、量ではなく質によって伝わります。思慮深く、自我や怒りや焦りに支配されずに語る者の言葉こそ、静かに人の心を変えるのです。
現代では、情報や言葉が氾濫する中で、「どれだけ話すか」ではなく、**「どのように、なぜ語るか」**が問われる時代です。まさにこの偈は、沈黙と発言のバランス、語る前の沈思、伝える際の調和の重要性を説いています。
💼 ビジネスにおける解釈と応用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
プレゼン・発言の姿勢 | 自己主張ではなく、聞き手の理解や共感を重視した説明を行う。 |
クレーム・対話対応 | 感情を交えず、丁寧かつ真摯に本質を伝えるコミュニケーションが信頼を築く。 |
部下育成 | 単に指導するのではなく、本人の納得と内面の理解を導くような声かけを意識する。 |
経営・理念の伝達 | 理念やビジョンを、押し付けでなく「静かに納得させる語り口」で伝えることが影響力を高める。 |
🧠 心得まとめ(ビジネスパーソン向け)
「語るべきは、自らの思慮を超えた言葉ではなく、真理に触れた静かな響きである。」
声が大きい者が勝つのではない。慎みと真理に基づき、心から語る者の言葉は、自然と人を動かす。
本当に人の心に届く言葉とは、“自分のために語る”のではなく、“相手のために語られた”ものである。
この偈は、言葉を扱うすべての人(リーダー、教師、営業職、広報など)にとって、非常に本質的なメッセージを含んでいます。
コメント