口に心地よい美食は、度を越すとやがて身体を蝕み、毒となる。
心を喜ばせる楽しみもまた、過ぎれば人格を壊し、徳を失うことになる。
だが、どちらも「五分(ごぶ)」――つまり「ちょうど半ばのほどよさ」であれば、害もなく悔いも残らない。
喜びや快楽そのものを否定するのではなく、過ぎないことが大切なのだ。
欲望を正しく見極め、ほどよく制する。
それが、人生の健康と品格を保つ智慧である。
原文(ふりがな付き)
爽口(そうこう)の味(あじ)は、皆(みな)爛腸(らんちょう)腐骨(ふこつ)の薬(くすり)なり。五分(ごぶ)ならば便(すなわ)ち殃(わざわ)い無し。快心(かいしん)の事(こと)は、悉(ことごと)く敗身(はいしん)喪徳(そうとく)の媒(ばい)なり。五分ならば便ち悔(く)い無し。
注釈
- 爽口の味:舌触りが良く、美味に感じられる食べ物。現代で言う“グルメ”。
- 爛腸腐骨の薬:一時の快感の陰にある身体への毒。比喩的に「度を越した快楽」の害。
- 快心の事:心を喜ばせる娯楽・誘惑。達成感や楽しさを伴う事柄も含む。
- 五分:ちょうど中庸、半ば。ほどよさの象徴。五割程度に抑えること。
パーマリンク(英語スラッグ)
moderation-in-pleasure
(快楽にほどよさを)half-is-harmony
(五分が調和を生む)too-much-spoils-all
(過ぎたるは及ばざるがごとし)
この心得は、「断つ」ことではなく「抑える」ことに価値を見出すバランス感覚を教えてくれます。
ストイックにも享楽主義にも偏らず、人生の“ちょうどよさ”を探すヒントとなるでしょう。
コメント