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美味も快楽も、五分の節度が身を守る

口に心地よい美食は、度を越すとやがて身体を蝕み、毒となる。
心を喜ばせる楽しみもまた、過ぎれば人格を壊し、徳を失うことになる。

だが、どちらも「五分(ごぶ)」――つまり「ちょうど半ばのほどよさ」であれば、害もなく悔いも残らない。
喜びや快楽そのものを否定するのではなく、過ぎないことが大切なのだ。

欲望を正しく見極め、ほどよく制する。
それが、人生の健康と品格を保つ智慧である。


原文(ふりがな付き)

爽口(そうこう)の味(あじ)は、皆(みな)爛腸(らんちょう)腐骨(ふこつ)の薬(くすり)なり。五分(ごぶ)ならば便(すなわ)ち殃(わざわ)い無し。快心(かいしん)の事(こと)は、悉(ことごと)く敗身(はいしん)喪徳(そうとく)の媒(ばい)なり。五分ならば便ち悔(く)い無し。


注釈

  • 爽口の味:舌触りが良く、美味に感じられる食べ物。現代で言う“グルメ”。
  • 爛腸腐骨の薬:一時の快感の陰にある身体への毒。比喩的に「度を越した快楽」の害。
  • 快心の事:心を喜ばせる娯楽・誘惑。達成感や楽しさを伴う事柄も含む。
  • 五分:ちょうど中庸、半ば。ほどよさの象徴。五割程度に抑えること。

パーマリンク(英語スラッグ)

  • moderation-in-pleasure(快楽にほどよさを)
  • half-is-harmony(五分が調和を生む)
  • too-much-spoils-all(過ぎたるは及ばざるがごとし)

この心得は、「断つ」ことではなく「抑える」ことに価値を見出すバランス感覚を教えてくれます。
ストイックにも享楽主義にも偏らず、人生の“ちょうどよさ”を探すヒントとなるでしょう。

目次

1. 原文

爽口之味、皆爛腸腐骨之藥。五分無殃。
快心之事、悉敗身喪德之媒。五分無悔。


2. 書き下し文

爽口の味は、皆、腸を爛し骨を腐らすの薬なり。五分なれば、すなわち殃(わざわい)無し。
快心の事は、ことごとく身を敗(やぶ)り徳を喪(うしな)うの媒(なかだち)なり。五分なれば、すなわち悔い無し。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 爽口の味は、皆、腸を爛し骨を腐らすの薬なり。
     → 口当たりが良くて美味しい食べ物は、たいてい体を壊す毒のようなものだ。
  • 五分なれば、すなわち殃(わざわい)無し。
     → しかし、それを五分(=ほどほど)にしておけば、害は及ばない。
  • 快心の事は、ことごとく身を敗り徳を喪うの媒なり。
     → 心地よく満足感を与えるようなことは、大抵、自分の身を破り、人格を堕とすきっかけになる。
  • 五分なれば、すなわち悔い無し。
     → しかし、それを五分(=節度を持って)にしておけば、後悔することもない。

4. 用語解説

  • 爽口之味(そうこうのあじ):舌触りや口当たりが良く、美味しく感じる味。
  • 爛腸腐骨(らんちょうふこつ):腸をただれさせ、骨を腐らせる。健康を害するほどの害毒。
  • 五分(ごぶん):五割=過不足ないほどほどの度合い。ここでは「節度・中庸」を意味する。
  • 快心之事(かいしんのこと):心を満たして快いと感じる行為や出来事。
  • 敗身喪徳(はいしん そうとく):身体を損ない、人徳・人格をも失うこと。
  • 媒(ばい):仲立ち、媒介となるもの。ここでは「引き金・原因」の意。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

口当たりのよい美味しいものは、体に悪い毒のようなものだ。しかし、それを適度に控えて摂れば害はない。
同じように、心地よくて快感を覚える出来事も、身を崩し徳を失う原因となる。しかし、それもほどほどにすれば、後悔せずに済む。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「快楽や満足は節度が必要である」という戒めを、身体と精神の両面から語っています。

  • 第一文は「過食・美食の害」、つまり身体的欲望への節度を説く。
  • 第二文は「快楽・成功・称賛などの過剰な追求による堕落」、つまり精神的欲望への節度を説く。

人間は「気持ちいいこと」「美味しいこと」に惹かれがちですが、それを無制限に追求すると、健康や品性が破綻する。それを防ぐには「五分=ちょうどよい加減」が鍵だという、中庸の徳を強調する教訓です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 「過剰な成功体験や快楽の連続は、破綻の前兆」

快適な成果ばかりに甘んじ、反省や内省を怠ると、次第に人は油断し、成長も止まる。栄光の後に崩壊が訪れるのは、その“快心の事”を五分に抑えられなかったから。

● 「働きすぎ・食べすぎ・褒めすぎ、全て“節度”が命」

美味しい接待、気持ちのよい昇進、人の賞賛──すべて良いものに見えても、過剰に続くと人を堕落させるリスクを持つ。どれだけ良いことであっても、“五分”にとどめる意識が必要。

● 「中庸の習慣が、組織と個人を長く活かす」

短期的な快感より、長期的な安定と信頼を目指す文化づくり。目先の快楽よりも“節度ある持続”を尊ぶ方針が、健全で長続きする企業運営に繋がる。


8. ビジネス用の心得タイトル

「快楽は毒にも薬にもなる──五分の節度が、身と徳を守る」


この章句は、**「欲望との適切な距離感」**を教えてくれる、現代においても非常に実践的な人生哲学です。

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