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■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「人々の信仰は三種である。それは各自の本性から生ずる。すなわち、純質的、激質的、暗質的な信仰である。それらについて聞け。」
――『バガヴァッド・ギーター』第17章 第2節
■逐語訳
神(バガヴァーン=クリシュナ)は語った:
「人の信仰には三つの種類がある。それはそれぞれの本性(プラクリティ)に根ざして生まれる。すなわち、サットヴァ(純質)、ラジャス(激質)、タマス(暗質)の三種である。それについて今、話そう。」
■用語解説
- 信仰(シュラッダー):理性を超えて対象に向かう、心の深い確信や寄託。
- 本性(プラクリティ):生まれ持った性質や傾向。三つのグナ(性質)から成る。
- 純質(サットヴァ):清らかで調和的な性質。知性・誠実・明晰さをもたらす。
- 激質(ラジャス):情熱的・動的な性質。欲望・競争・不安定さを伴う。
- 暗質(タマス):鈍重・混迷の性質。怠惰・無知・依存・破壊性をもたらす。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、人間の信仰が一様ではないことを説明する。それは「本性」によって異なり、清らかで調和のとれた信仰(純質)、欲望や自己顕示に満ちた信仰(激質)、盲信や破壊的な信仰(暗質)という三つに分かれるという。信仰の「対象」よりも、「それを抱く人の内面」が問われている。
■解釈と現代的意義
この節は、「人間の信仰や信念」は、生まれつきの性格や育ち方により形作られ、必ずしも純粋なものとは限らないことを示しています。
つまり、信じていること自体が正しいかどうかを検証せずに、そのまま信じ続ける危うさがあり、自らの内面を吟味する必要があるという教えです。現代においても「盲信」や「熱狂的な信仰」がトラブルの原因になることは少なくありません。信仰には「質」があるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
理念と文化形成 | 社員の価値観や信念は、個人の性質や環境に依存している。組織は「純質的な信頼」や「健全な使命感」に導く文化を育む必要がある。 |
リーダーシップ | 情熱的に見える信仰(ラジャス)も、実は競争心や焦燥感の表れであることがある。リーダーはその内面の性質を見抜く洞察力を持つべき。 |
採用や人材育成 | ただ「熱意がある」「意欲的だ」だけでは足りない。どの「性質」に基づくものかを見極め、純質的志向を支援する育成方針が重要である。 |
■心得まとめ
「何を信じるかより、どう信じるかが人を決める」
信仰や価値観は単に「強ければ良い」ものではなく、その背景にある「心の質」が問われる。
純質な心から生まれる信仰は人を高め、激質や暗質に基づく信仰は人を惑わす。信念の力を正しく導くには、自己の内面を知ることから始まる――これは現代のマネジメントにおいても通用する普遍の真理です。
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