MENU

幸福も不幸も、すべては心の持ち方しだい

人生が幸せなものになるか、不幸に満ちたものになるか――
その分かれ目は、外の環境ではなく、自分自身の「心の在り方」にある。

釈尊はこう説いている:
利得や欲望を求める心が燃えさかるとき、この世はたちまち炎の地獄と化す。
貪りや執着に溺れれば、それは果てしない苦しみの海となる。
しかし、たった一つの「清らかな心」を持てば、その燃えさかる炎も穏やかな池に変わる。
一瞬の「目覚め」があれば、苦しみの海を渡る舟は、悟りの彼岸にたどり着けるのだ。

このように、ほんの少し心の向きを変えるだけで、
私たちの世界の見え方、人生そのものの質が劇的に変わる。

だからこそ、心をどう保つか、日々どう思うか――
その一点に、人生の命運がかかっている。慎重に、丁寧に向き合いたいものである。


原文とふりがな付き引用

人生(じんせい)の福境禍区(ふっきょうかく)は、皆(みな)念想(ねんそう)より造成(ぞうせい)す。
故(ゆえ)に釈氏(しゃくし)云(い)わく、「利欲(りよく)に熾然(しぜん)なれば、即(すなわ)ち是(これ)火坑(かこう)なり。
貪愛(とんあい)に沈溺(ちんでき)すれば、便(すなわ)ち苦海(くかい)と為(な)る。
一念(いちねん)清浄(しょうじょう)なれば、烈焰(れつえん)も池(いけ)と成(な)り、
一念警覚(けいかく)すれば、船(ふね)彼岸(ひがん)に登(のぼ)る」。
念頭(ねんとう)稍(やや)異(こと)なれば、境界(きょうがい)頓(とみ)に殊(こと)なる、慎(つつし)まざるべけんや。


注釈

  • 福境禍区(ふっきょうかく):幸福と不幸の分岐点。人生の良し悪しの境目。
  • 念想(ねんそう):心のはたらき、思考、考え方。
  • 利欲(りよく)に熾然(しぜん)なれば:利益や欲望への執着が燃えさかると。
  • 火坑(かこう):炎に包まれた地獄の穴。心の欲望が作り出す苦しみの比喩。
  • 貪愛(とんあい)に沈溺(ちんでき)すれば:欲望や執着に溺れると。
  • 苦海(くかい):仏教における苦しみの海。輪廻や煩悩の世界。
  • 清浄(しょうじょう):汚れのない清らかな心の状態。
  • 警覚(けいかく):目覚め、覚醒。迷いからの脱却。
  • 彼岸(ひがん):仏教で悟りの境地を指す。

1. 原文

人生福境禍區、皆念想造成。故釋氏云、利欲熾然、卽是火坑。貪愛沈溺、便爲苦海。一念清淨、烈焰成池。一念警覺、船登彼岸。念頭稍異、境界頓殊、可不愼哉。


2. 書き下し文

人生の福境(ふくきょう)・禍区(かく)は、皆(みな)念想(ねんそう)より造成(ぞうせい)す。
故(ゆえ)に釈氏(しゃくし)云(い)う、「利欲(りよく)熾然(しぜん)なれば、即(すなわ)ち是(こ)れ火坑(かこう)なり。
貪愛(とんあい)に沈溺(ちんでき)すれば、便(すなわ)ち苦海(くかい)と為(な)る。
一念(いちねん)清浄(しょうじょう)なれば、烈焰(れつえん)も池(ち)と成(な)り、
一念警覚(けいかく)すれば、船(ふね)彼岸(ひがん)に登(のぼ)る」。
念頭(ねんとう)稍(わず)かに異(こと)なれば、境界(きょうがい)頓(とみ)に殊(こと)なる、慎(つつし)まざるべけんや。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「人生における幸福な境遇も、不幸な状況も、すべては心の思い(=念想)がつくり出すものである」
  • 「だから仏教ではこう言う、“利欲が燃え盛れば、そこはまさに火の穴となり、」
  • “貪り愛する心に溺れれば、それは苦しみの海となる。”
  • 「しかし一つの思いが清らかであれば、燃え盛る炎すらも清らかな池に変わり、」
  • 「一つの気づきがあれば、たちまちその舟は彼岸(悟り)にたどり着く。」
  • 「わずかに思いが異なるだけで、見える世界・生きる境地は一変してしまう──ゆえに心を慎重に扱うべきである。」

4. 用語解説

  • 福境禍区(ふくきょうかく):幸せな境遇と不幸な状況。人間の運命的な体験領域。
  • 念想(ねんそう):心の中の思い。意念・思念。
  • 利欲熾然(りよくしぜん):利益や欲望が燃え上がって激しい状態。
  • 火坑(かこう):業火が燃え盛る地獄の穴のこと。欲望の炎のたとえ。
  • 貪愛沈溺(とんあいちんでき):愛欲や執着におぼれて抜け出せないこと。
  • 苦海(くかい):仏教語。人間の苦悩の世界を“海”にたとえる。
  • 一念清浄(いちねんしょうじょう):一つの心が清らかであること。
  • 烈焰成池(れつえんせいち):燃え盛る炎が、静かな池に変わる。心の転換による境地の変化。
  • 一念警覚(いちねんけいかく):一つの気づき・覚醒。
  • 彼岸(ひがん):仏教で煩悩を超えた悟りの世界。
  • 念頭稍異(ねんとうしょうい):ほんのわずかな心の違い。
  • 境界頓殊(きょうがいとんしゅ):世界の在り方・人生の様相が急に変わること。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

人生の幸不幸は、外の世界が決めるのではなく、自分の思いや意識のあり方が作り出すものだ。
利や欲に心を燃やせば、たちまちその場は苦しみの火の穴となり、
執着や愛にとらわれれば、たちまち苦しみの海に沈んでしまう。
だが、心が一つでも清らかになれば、怒りや欲の炎ですらも安らぎの池と変わり、
一つの目覚めがあれば、すぐにでも悟りへとたどり着くことができる。
たった少しの心の持ちようで、見える世界が全く違ってしまう──だからこそ、心の動きを慎重に見つめ、整えることが大切なのだ。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、仏教思想に基づく**「心が現実をつくる」**という世界観を説いています。

  • 幸福も不幸も、環境ではなく「心の状態」がつくっている
  • 欲望・執着・怒りなどの念が苦を生み、清らかな念が癒しと智慧をもたらす
  • 一念で世界は変わる──**「外を変えるより、内を変えよ」**という東洋思想の核心がここにあります

7. ビジネスにおける解釈と適用

✅ 「成果が出ないのは環境のせい」ではなく、「自分の念想」が現実を作っている

上司・部下・市場・天候…ではなく、自分の“心の反応”が問題の本質かもしれない。

✅ 一念清浄でチームの雰囲気も変わる

マネージャーの一つの前向きな思念が、全体の空気・信頼・行動を変える起点になる。

✅ 「火坑」も「池」も、環境は変わらずとも“見方”次第で変わる

ネガティブな状況も、解釈の仕方で学びや創造のチャンスに変わる。
→ メンタルモデルの再構築が重要

✅ 「彼岸」とは、成果の到達点ではなく、“気づきの転換点”である

大きな業績や報酬よりも、「気づきに至る心の変化」こそ、個人と組織の真の進化。


8. ビジネス用の心得タイトル

「火となるか池となるか──すべては“一念”が決めている」


この章句は、セルフマネジメント研修や、レジリエンス(心の強さ)トレーニングに最適な思想的支柱です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次