―『貞観政要』巻一より
🧭 心得
名家とは、先祖の地位を誇る家ではなく、今を生きる人々の徳と才能によって称えられる家である。
太宗は、古の家柄にかこつけて婚姻に高額の財を求める風潮を厳しく批判し、『氏族志』を編纂して実情に即した家格の見直しを命じた。
過去の栄光にすがるだけの名家を重んじるのではなく、現実の官位や行い、忠義と才覚をもって、家の価値を定めることこそが正しいと説いている。
🏛 出典と原文(抜粋)
太宗謂(たいそうい)いて曰(いわ)く、「比(このごろ)山東(さんとう)の崔(さい)・盧(ろ)・李(り)・鄭(てい)の四姓(しせい)有(あ)り、雖(いえど)も累葉(るいよう)陵遲(りょうち)すといえども、恃(たの)むは其(そ)の旧地(きゅうち)、好(この)んで自(みずか)ら矜大(きょうだい)し、士大夫(したいふ)と称(しょう)す。……或(あるい)は才識(さいしき)庸下(ようか)にして、偃仰(えんぎょう)自(みずか)ら高しとし、販鬻(はんいく)松檟(しょうき)、富貴(ふうき)に依託(いたく)す。……士大夫(したいふ)は能(よ)く功(こう)を立(た)て、位(くらい)崇重(すうちょう)にして、忠孝(ちゅうこう)称(しょう)すべし。……我今(いま)氏族(しぞく)を定(さだ)むるは、欲(ほっ)して今(いま)の冠冕(かんべん)を崇(たっと)くせしむるなり。ただ今(いま)の官品(かんぴん)、人材(じんざい)を取(と)りて、宜(よろ)しく一(いつ)に量定(りょうてい)すべし」と。
🗣 現代語訳(要約)
太宗は、古い名家が先祖の名声を頼みに多額の持参金を求める婚姻慣習を問題視し、実際の官職・行動・人格を基準として氏族を再評価するよう命じた。結果、崔氏の家格も再編され、現代の価値に見合う形に格付けし直された。
📘 注釈
- 氏族志(しぞくし):貴族・士大夫階層の家格を記した記録書。血統や官位、行状に基づいてランクづけされた。
- 販鬻松檟(はんいくしょうき):娘を「商品」として売るがごとく婚姻に利用することの比喩。
- 冠冕(かんべん):高い官位・役職を帯びた者の象徴。ここでは現代の官位を重んじる意。
- 矜大(きょうだい):自尊心が過度に強く、誇り高ぶること。
🔗 パーマリンク案(英語スラッグ)
merit-over-lineage
(主スラッグ)- 補足案:
true-nobility-today
/honor-in-action-not-ancestry
/reform-of-clan-values
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