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■引用原文(日本語訳)
「自己を克服し寂滅した人の最高の自己は、寒暑や苦楽においても、毀誉褒貶においても、統一された状態でいる。」
(『バガヴァッド・ギーター』第6章 第7節)
■逐語訳(一文ずつ)
- 自己を克服し(内面の衝動に勝ち)、心が静寂(寂滅)に達した人は、
- その「最高の自己(真我・アートマン)」が、
- 寒さや暑さ、苦しみや喜び、称賛や非難といったあらゆる二元的状況においても、
- 常に統一された平静な状態であり続ける。
■用語解説
- 自己を克服する:欲望・怒り・妄念といった内面の障害を乗り越えること。自律的な心の支配者となること。
- 寂滅(シャーンタ):完全な静けさ・心の沈静。波立たぬ湖のように静まった精神状態。
- 最高の自己(パラマートマン):人間の中にある最も高次の自己。魂・真我・神的意識とも訳される。
- 寒暑・苦楽・毀誉褒貶:外的状況(気候・身体感覚)、感情の揺れ、他人の評価など、揺らぎをもたらす要因。
- 統一された状態(サマヒター):揺れない、ブレない、均衡が取れた統一的精神の状態。
■全体の現代語訳(まとめ)
心を克服して沈静に至った人は、自身の高次な精神(最高の自己)によって、どのような外的状況にも乱されない。
寒さや暑さ、苦しみや喜び、人からの非難や称賛にも動じず、常に落ち着いた精神状態にある。
■解釈と現代的意義
この節は、「精神の成熟」とは、状況に左右されない静かな自己を持つことであると説いています。
多くの人は、気分や天候、他人の評価によって心が揺れます。
しかし本当に成熟した人は、自分の中心が揺らがない。まさに、不動の自分を持つことが、最高の自由なのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と適用例 |
---|---|
安定した判断力 | 外部の混乱(不景気・トラブル・批判)があっても冷静に判断できるリーダーが、組織を救う。 |
メンタル耐性 | 高評価や批判に一喜一憂するのではなく、着実に自分の道を歩む姿勢が、長期的信頼を築く。 |
客観性 | 「寒い」「忙しい」「きつい」といった状況に心を支配されず、淡々と任務を全うする力は希少な資質。 |
信頼の根源 | 周囲が揺れてもブレない人物は、組織における安定の柱となる。 |
■心得まとめ
「動じぬ心が、真の強さをつくる」
心を制し、沈静に至った者は、どんな賞賛にも傲らず、どんな非難にも沈まない。
寒さや暑さ、喜びや痛みにすら影響されず、自らの中心を保ち続ける――
それが、バガヴァッド・ギーターが示す「精神のプロフェッショナル」である。
現代のビジネスにおいても、こうした「不動心」は、最も信頼されるリーダー資質の根幹である。
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