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簿記の勘定科目:「一括償却資産」の基礎知識

簿記や会計処理において、「一括償却資産」という概念は、少額の固定資産を効率的に管理するために用いられます。税法上の特例に基づく処理方法で、企業の経理業務を簡素化する効果があります。今回は、「一括償却資産」の基本知識や会計処理のポイントを解説します。


一括償却資産とは?

一括償却資産とは、取得価額が一定の金額以下(2024年現在、20万円以上30万円未満)の資産で、通常の固定資産のように耐用年数に基づく減価償却ではなく、3年間で均等に償却する特例が適用される資産を指します。

  • 対象資産:機械装置、工具器具備品、建物附属設備など
  • 償却方法:3年均等償却(購入した年度に関わらず、3年で一括償却)

一括償却資産の対象基準

一括償却資産として処理するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 取得価額
    20万円以上30万円未満の資産が対象です。20万円未満の資産は「少額資産」として全額損金処理が可能です。
  2. 事業で使用する資産
    事業活動で使用する固定資産が対象です。個人使用や趣味のための資産は対象外です。
  3. 耐用年数が1年以上
    消耗品や短期使用のものは対象外となります。

一括償却資産の取得原価

一括償却資産の取得原価には、購入費用だけでなく、関連する付随費用も含まれます。

  • 購入価格
  • 配送費用
  • 設置工事費用
  • 初期設定費用(必要な場合)

例:25万円のパソコンを購入し、配送費が1万円かかった場合

借方:一括償却資産 260,000円  
貸方:普通預金 260,000円

一括償却資産の償却方法

一括償却資産は、取得年度に関わらず3年で均等に償却します。これにより、減価償却累計額が3年で取得原価全額に達します。

例:24万円の機械装置を購入した場合
3年間で8万円ずつ償却します。

  • 1年目の仕訳
  借方:減価償却費 80,000円  
  貸方:一括償却資産償却累計額 80,000円
  • 2年目の仕訳
  借方:減価償却費 80,000円  
  貸方:一括償却資産償却累計額 80,000円
  • 3年目の仕訳
  借方:減価償却費 80,000円  
  貸方:一括償却資産償却累計額 80,000円

3年後には全額が償却されます。


一括償却資産のメリットと注意点

メリット
  1. 経理業務の簡素化
    通常の耐用年数を基にした複雑な償却計算を省略できます。
  2. 税務面の利点
    資産を早期に償却することで、短期的な費用計上が可能になり、節税効果が得られる場合があります。
  3. 少額資産との使い分け
    一括償却資産を利用することで、20万円未満の少額資産と区分して管理しやすくなります。
注意点
  1. 途中売却・廃棄の処理
    一括償却資産は、3年の均等償却が原則です。途中で売却や廃棄した場合でも、残存簿価を償却費として処理し続ける必要があります。
  2. 耐用年数による通常償却との違い
    一括償却資産の処理は通常の減価償却とは異なるため、固定資産台帳の管理を適切に行う必要があります。
  3. 税務署への届け出が必要な場合がある
    一括償却資産の特例を適用する場合、税務署への届け出が必要になるケースがあります(事前に確認することが重要です)。

一括償却資産のよくある仕訳例

  1. 一括償却資産の購入
   借方:一括償却資産 250,000円  
   貸方:普通預金 250,000円
  1. 減価償却費の計上(1年目)
   借方:減価償却費 83,333円  
   貸方:一括償却資産償却累計額 83,333円
  1. 途中で売却・廃棄した場合(3年目に売却)
    売却や廃棄後も、残存簿価を償却する必要があります。

まとめ

一括償却資産は、少額固定資産を効率的に管理するための有用な制度です。3年間で均等償却することで経理業務を簡素化し、税務上の利点を活用できます。ただし、途中売却や廃棄の際の処理や、通常償却資産との区別をしっかり管理することが重要です。

この機会に、自社の少額固定資産の管理状況を見直し、一括償却資産の適切な運用を検討してみてはいかがでしょうか?

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