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義務から逃げれば、名誉と魂を失う


目次

■原文(日本語訳)

第2章 第33節
クリシュナは言った。
「もしあなたが、この義務に基づく戦いを行わなければ、
自己の義務と名誉とを捨て、罪悪を得るであろう。」


■逐語訳

  • この義務に基づく戦い(ダルマッヤッデム):秩序と正義のために為される、正当な戦い。
  • 行わなければ(チェット・トヴァム・ナ・カリシュヤシ):あなたがそれを実行しなければ。
  • 自己の義務(スヴァ・ダルマン):自身に課された本来の職分・責務。
  • 名誉(キールティム):社会的な評価、正しい行為による尊敬。
  • 罪悪(パーパム):道義的な堕落。ダルマから逸脱することによって生じる内的・外的悪果。

■用語解説

  • スヴァダルマ(自己の義務):個々の立場・性質に応じた務め。カルマ(行為)の根拠ともなる。
  • キールティ(名誉):義務を果たした者に与えられる社会的・精神的な尊敬。
  • パーパ(罪):行うべきことを怠ったり、間違った行為をしたときに生じる道徳的報い。

■全体の現代語訳(まとめ)

クリシュナは、アルジュナの内面の迷いに対してこう断じます。
「あなたがこの義務としての戦いを放棄すれば、自らの責務と名誉の両方を失い、
本来避けるべき罪(悪しき結果)を自ら招くことになるのだ」と。

これは、「正しいことをしない」こともまた罪であるという倫理観に基づいた、厳粛な警告です。


■解釈と現代的意義

この節は、単に行動しないこと(怠惰・逃避)が中立ではなく、むしろ責任から逃げること自体が罪であるという明確な倫理観を提示しています。
「何もしていないから悪くない」ではなく、「すべきことをしなかった」ことが、
魂の堕落・信頼の喪失・後悔の原因になるという深い洞察が含まれています。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈と応用例
職責と信頼与えられた責務を果たさなければ、信頼や評価は失われる。名誉を守るのは日々の実行力にある。
リーダーシップの本質難しい決断や行動から逃げたリーダーは、信頼を失い、組織の士気も下がる。責任から逃げない姿勢が最も重要。
キャリアと自尊心義務を避けて楽な道を選べば、短期的にはラクでも、長期的にはキャリアと自己肯定感の損失につながる。
組織文化の醸成義務を果たす文化が根づいた組織は強くなる。逆に、「見て見ぬふり」を許す文化は堕落と停滞を招く。

■心得まとめ

「すべきことをしないことが、最大の過ちになる」
与えられた義務から逃げれば、
名誉を失い、魂の清らかさも傷つく。

行動しないことによって失うものの方が、行動によって失うものよりも遥かに大きい――
それが、バガヴァッド・ギーターの教えです。


次の第34節では、義務を放棄した結果、周囲からの非難や嘲笑といった「現実的な社会的報い」が語られます。

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