人は穏やかであることが望ましい。
争わず、怒らず、円満に人と交わる姿は、
処世の徳として多くの称賛を集める。
だが、円満さを過ぎれば、節を失う。
ただ柔らかいだけでは、風にも折れる芒のように、
人としての芯と品格を保つことはできない。
和やかさと腰の低さは美徳である。
されど、是非の境を見極めずに流されるだけでは、
人から敬われるに値せぬ「無色の人間」となる。
ことなかれ主義に堕してはならぬ。
「誰からも嫌われぬこと」ばかりに気を配れば、
「誰からも信頼されぬ人間」となるおそれがある。
真の円満とは、
己に節ありて、他と調和する姿にこそ宿る。
意見を述べるべき時に沈黙せず、
不義に対しては然るべき態度を保ち、
必要な場面では、己の正しさに基づいて断じて立つ。
それでこそ、円満は空虚な飾りではなく、
信頼をともなった人格の光となる。
円満さに骨気を忘れるな。
柔和さに節を失うな。
和して濁さずの道こそが、
真に人の品を高める術である。
○如何に人の品性は円満に発達せねばならぬものであるからとて、あまりに円満になり過ぎると、……人として全く品位のないものになる。
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