オフィス什器メーカーとして事業を展開するJ社は、主要な販売先として業界第4位の規模を持つS社と取引を続けている。S社は全国規模の流通ネットワークを有し、県別売上データを毎月作成して各メーカーと共有するなど、流通業界において強力なプレゼンスを誇っている。一方で、J社の販売体制はと言えば、S社を含む少数のディーラーに依存しており、その多くは地域密着型の小規模業者にとどまる状況だ。
販売体制の課題と「意識改革」
J社の営業部門は、実質的にS社との連絡業務が中心であり、営業活動や販促策を主導する姿勢が希薄だった。社内には「販売は流通業者が担うものであり、メーカーはサポート役に徹するべき」という考え方が根強く、このスタンスがJ社の成長を阻んでいる一因となっていた。
しかし、S社が業界第4位に位置する以上、J社の商品売上も期待するほどの成績には結びついていなかった。そのため、経営陣は意識改革に乗り出す必要性を痛感。「自社の商品は自らが売る」という強い姿勢を確立することが最優先課題として浮上した。
地方市場の低迷と地元市場の重要性
J社が特に頭を悩ませていたのは、九州・四国地方での売上不振だ。競合他社の影響力が強い上に、現地でのメインディーラーが弱いという現状は、同社の課題をより複雑化させていた。こうした状況を打破しようとする姿勢は理解できるが、果たしてそれが最善のアプローチと言えるのか。
私はこの戦略を根本から見直す必要性を提案した。その意図は明快だ。「まずは地元市場で圧倒的なシェアを確保するべきだ」と。地元での市場基盤が弱ければ、他地域への展開など到底望めない。J社が真に全国戦略を実現するためには、まず地元市場を強化し、揺るぎない基盤を築くことが最優先だと確信している。
地元から始める全国戦略
地元市場を強化することは、単なる売上向上以上の意味を持つ。それは自社のブランド力や競争力を磨き上げる基盤であり、流通業者との関係をより深める契機となる。J社が真に全国展開を目指すならば、その第一歩は、地元市場での圧倒的な信頼と実績を確立することに他ならない。
J社が地元での地歩を固めることで、九州・四国といった課題地域への展開も自然と実現可能なものとなるだろう。「地元から全国へ」という一歩一歩着実に進む戦略こそが、J社の未来を切り拓く鍵になると確信している。
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