孔子は、人生の理想的な歩み方についてこう語った。
正しい道を志し、得た徳をしっかりと支えとし、人を思いやる「仁」の心をよりどころにしながら――
そのうえで、芸や趣味、教養を楽しむ余裕を持つこと。
これは単なる道徳の教えではなく、「よく学び、よく遊ぶ」という、人生の深みとゆとりを両立させた、孔子の成熟した生き方の姿勢でもある。
原文・ふりがな付き引用
子(し)曰(い)わく、道(みち)に志(こころざ)し、徳(とく)に拠(よ)り、仁(じん)に依(よ)り、藝(げい)に游(あそ)ぶ。
注釈
- 道に志す … 正しい道理、倫理に人生の目標を定めること。
- 徳に拠る … 身につけた徳を行動や価値判断の拠り所とする。
- 仁に依る … 他者への思いやりを生活の基盤とする。
- 藝に游ぶ … 教養や趣味を楽しみ、自分を深めること。遊ぶことは堕落ではなく、人間的成熟の一部とされた。
1. 原文
子曰、志於道、據於德、依於仁、游於藝。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、道(みち)に志(こころざ)し、徳(とく)に拠(よ)り、仁(じん)に依(よ)り、藝(げい)に游(あそ)ぶ。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)
- 「道に志し」
→ 人の正しい生き方(道)を目指して志すこと。 - 「徳に拠り」
→ 道徳や人格の力に基づいて生きること。 - 「仁に依り」
→ 思いやりや愛(仁)に支えられて人と接すること。 - 「藝に游ぶ」
→ 藝(=教養・技芸)を楽しみ、心を養うこと。
4. 用語解説
- 道(みち):人生の理想的な生き方、倫理的・哲学的な真理。
- 志(こころざす):心から目指し、追い求めること。
- 徳(とく):人間としての品格、道徳的力量。
- 拠る(よる):土台とする、拠点とするという意味。
- 仁(じん):思いやり・他者への共感・慈愛。
- 依る(よる):支えとする、よりどころとする。
- 藝(げい):儒教では、六藝(礼・楽・射・御・書・数)に代表される教養や技芸。現代では広く文化・技能・趣味なども含む。
- 游ぶ(あそぶ):単なる娯楽ではなく、心に余裕をもって親しむ・楽しむという高尚な意味。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言いました:
「正しい道を志とし、徳を人生の拠りどころとし、思いやりの心に支えられ、教養や技芸を楽しんで心を養うべきである。」
6. 解釈と現代的意義
この章句は、人格形成と生涯学習の理想的バランスを示しています。
- 「道に志す」:人生の目標・ビジョンに向かう姿勢
- 「徳に拠る」:行動の中心に品格を置くこと
- 「仁に依る」:他者との関係において、共感・優しさを基盤とすること
- 「藝に游ぶ」:生きる喜びとして、文化・学び・趣味などに心を遊ばせる余裕
単なる“努力”や“成功”の価値観に偏ることなく、内面の豊かさ・他者への思いやり・教養ある楽しみを通じて、全人的に充実した人生を追求すべきことが示されています。
7. ビジネスにおける解釈と適用
■「理念に生きる」──道に志す
単なる売上やKPIではなく、企業の存在意義・顧客への貢献・社会的使命を掲げ、それを心から志すこと。
■「信頼の源は人格」──徳に拠る
マネジメントや営業の基本は、誠実さ・責任感・謙虚さといった“徳”にある。スキルの前に人間力が問われる。
■「組織文化を支えるのは“仁”」──仁に依る
部下への配慮、顧客への思いやり、相互理解の精神など、仁こそが組織の調和と持続性を支える。
■「学びと余裕が創造力を育む」──藝に游ぶ
余暇や教養を大切にすることが、創造性・直観力・柔軟な発想力を生み、長期的には仕事の質に直結する。
8. ビジネス用心得タイトル
「志を抱き、徳に立ち、仁でつなぎ、藝に遊ぶ──全人格的リーダーの道」
この章句は、ビジョン経営、価値観教育、リーダー育成、ワークライフバランスの研修など幅広い場面での活用が可能です。
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