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自然と一体となって、のびやかに生きる

魚は水を得て自由に泳ぎ、鳥は風に乗って自在に飛ぶ。
だが、魚も水の存在を忘れ、鳥も風の存在を知らない。
このように自然と調和している生き物の姿から学べば、
私たち人間も、地位・名誉・財産・人間関係などの煩わしさを超越し、
天地の理にかなった、本来の人間らしい姿で、のびのびと楽しんで生きることができる。

「魚(うお)は水(みず)を得(え)て逝(ゆ)き、而(しか)して水を相(あい)忘(わす)れ、鳥(とり)は風(かぜ)に乗(じょう)じて飛(と)びて、風有(あ)るを知らず。此(こ)れを識(し)らば、以(もっ)て物累(ぶつるい)を超(こ)ゆべく、以て天機(てんき)を楽(たの)しむべし。」

形式にとらわれず、自然に沿い、無心に生きること。
それこそが、人として最も自由で豊かな在り方である。


※注:

  • 「水を相忘れ」…魚と水、鳥と風がお互いの存在を忘れている様子。『荘子』「大宗師篇」にも「魚は江湖に相忘れ、人は道術に相忘る」とある。自然との完全な一体感を意味する。
  • 「物累(ぶつるい)」…地位、名誉、財産、人間関係などの俗世の煩わしさ。外物のしがらみ。
  • 「天機(てんき)」…天地自然のはたらきにかなった、本来の人間らしさ。

原文

魚得水而相忘乎水、鳥乘風飛而不知有風。
識此、可以超物累、可以樂天機。


書き下し文

魚は水を得て逝(ゆ)き、而(しか)して水を相(あい)忘(わす)れ、鳥は風に乗じて飛び、風有るを知らず。
此(これ)を識(し)らば、以(もっ)て物累(ぶつるい)を超(こ)ゆべく、以て天機(てんき)を楽しむべし。


現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

「魚は水にあることで自由に泳いでいるが、水の存在そのものを意識しているわけではない」
→ 水中で自然に泳ぐ魚は、水を意識せずに溶け込むように生きている。

「鳥は風に乗って飛んでいるが、風の存在を意識しているわけではない」
→ 鳥は風を頼りに飛翔しているが、それを感じてはいない。まさに自然に沿った生。

「この道理を理解すれば、物の束縛を超え、天機を楽しむことができる」
→ 自然と一体となるこの境地を知れば、物欲や執着から離れ、天の理にかなった真の喜びを味わうことができる。


用語解説

  • 相忘(あいわす)れ:互いに存在を意識せず自然と調和しているさま。荘子の思想によく見られる語。
  • 物累(ぶつるい):物質的な束縛・執着。財産、名誉、欲望などの人を縛るもの。
  • 天機(てんき):自然の理(ことわり)、天地の深いはたらき。天の意志、天性、本然の智慧とも解釈される。

全体の現代語訳(まとめ)

魚は水の中で自由に泳ぎながらも、水の存在を忘れている。
鳥も風に乗って飛んでいるが、風のことなど気にしていない。
この真理に気づけば、物質的な束縛を超えて、天地自然の理(ことわり)にかなった生き方の中で真の喜びを味わえるようになる。


解釈と現代的意義

この章句は、**「自然と一体になることの大切さ」**を説いています。特に、**意識せずとも調和している境地=無為自然(むいじねん)**の理想が語られています。

  • 魚にとっての水、鳥にとっての風、それは意識の外にある“環境”であり、“本然”のものである
  • それをあえて意識することなく、ただ任せて生きる姿が、本来的な「自由」。

つまり、「意識的にあれこれと操作・管理・支配しようとしすぎる人間の愚かさを戒め」、
自然に、あるがままに生きる賢さ」を伝える章句です。


ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

1. 「環境を意識せず、自然に力を発揮する境地」

熟練したプロフェッショナルは、働いていることすら忘れるほど、仕事に自然と没頭できる。
これはいわゆる**フロー状態(没入)**の説明にも通じます。

2. 「システムと仕組みに“馴染む”ことでストレスが消える」

ルールやツール、役割を常に意識して疲弊するよりも、仕組みそのものに自然と“溶け込む”ことで、
エネルギーを消耗せず成果が出せる組織文化が形成されます。

3. 「執着を超えた“軽やかさ”が創造と革新を生む」

物に縛られ、過去の成功に固執するほど、新しい発想は生まれません。
一方で、軽やかに本質だけをとらえて生きる姿勢が、創造性と柔軟性を高めます


ビジネス用の心得タイトル

「意識を超え、自在に生きる──“無為自然”が真の力を呼ぶ」


この章句は、「自然と一体となり、執着を超えて生きることこそが、真に自由で、強く、幸せな在り方」であることを、魚と鳥の姿を借りて静かに教えてくれます。

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