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すべての命に、わが身を映して生きよ


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■引用原文(日本語訳)

第一〇章 暴力(ダンダヴァッガ)第129偈

すべての者は暴力におびえ、
すべての者は死をおそれる。
己が身をひきくらべて、
殺してはならぬ。
殺さしめてはならぬ。

(『ダンマパダ』第129偈)


■逐語訳

  • すべての者は暴力におびえる:生きとし生けるものは、害を与えられることを本能的に恐れている。
  • すべての者は死をおそれる:命ある限り、死を望まず、生き延びたいと願う。
  • 己が身をひきくらべて:自らの痛み・恐れと照らし合わせることで、他者の苦しみを想像する。
  • 殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ:自らが手を下すことはもちろん、他人に殺させるようにしてもならない。

■用語解説

  • 暴力(ダンダ):ここでは肉体的な暴力・殺傷を中心に、「他者を苦しめるあらゆる行為」を含意する。
  • 殺さしめてはならぬ:直接的行為に加え、命令・黙認・無関心による間接的加担も含む。

■全体の現代語訳(まとめ)

すべての命ある存在は、痛みや死を恐れている。私たち自身が暴力や死を嫌うように、他者も同じように感じていると知るべきである。ゆえに、自分がされて嫌なことを他者にしてはならず、ましてや他者を犠牲にして自らの目的を果たしてはならない。


■解釈と現代的意義

この偈は、共感と非暴力の倫理を強調するものです。ブッダは単なる規則として「殺してはならぬ」と述べているのではなく、「自らの心情と他者の心情を照らし合わせること」によって、内面的な理解と自発的な倫理を促しています。

現代社会では、身体的な暴力に限らず、言葉や立場の暴力、制度的な搾取が横行しています。自分が「されたら嫌なこと」を他者にしない、という原点に立ち返ることが、個人・組織・社会の健全性を高める鍵です。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
パワハラ・モラハラ対策立場や権力に任せた指導・命令・叱責は、暴力と変わらない。部下の立場になって考える姿勢が重要。
組織の倫理的判断利益のために誰かを犠牲にする(例:過剰な負荷、外注先の酷使)は「殺さしめる」構造の一形態である。
顧客対応・クレーム処理苦情や怒りの背後にも「恐れ」や「不安」がある。他者の感情を我がこととして理解することで、誠実な対応ができる。

■心得まとめ

「己の痛みを、他者の痛みとせよ」

暴力を避けることは、人間としての基本的な徳である。だがそれは、命を奪わないという表面的な話ではなく、「相手の恐れや痛みを自分のこととして理解すること」に根ざしている。

現代のビジネスにおいても、立場の上下、業績の優劣にかかわらず、「共感力を基礎とした行動」が求められる時代です。他者の心に敏感であること、それが本当の強さであり、信頼されるリーダーの第一歩なのです。


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