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■引用原文(日本語訳)
葉の上の露のように、錐の尖の芥子のように、
あらゆる欲情に汚されない人――
その人を、私は〈バラモン〉と呼ぶ。
(『ダンマパダ』第401偈|第二六章「バラモン」)
■逐語訳
- Yo ve udabindu pattaṃva:蓮の葉に落ちた露のように
- Tippatthena yathā kaṭaṃ:鋭い錐の先の芥子のように
- Saññojanaṃ na limpati:煩悩や欲に染まらず、付着しない者
- Tam ahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ:そのような人を、私は〈バラモン〉と呼ぶ
■用語解説
- 葉の上の露(udabindu pattaṃ):蓮の葉に乗った露は、表面張力により葉に染み込むことなく、コロコロと転がり落ちる。染まらず、留まらない象徴。
- 錐の尖の芥子(tippattha kaṭaṃ):極小で鋭利な先端に乗るほどの芥子(けし)の実。ごくわずかな接触にもとどまり、付着しない純粋さの象徴。
- 欲情・煩悩(saññojana):貪欲・怒り・無知など、心を縛り汚すもの。
- 染まらない・付着しない(na limpati):触れても影響を受けず、内面に取り込まない心の自由。
■全体の現代語訳(まとめ)
蓮の葉に落ちた露のように、錐の尖に乗った芥子の実のように、
あらゆる欲望や煩悩に触れても、決して染まらず、汚されずにある人――
そのような清らかで自由な心を持つ者こそ、真の〈バラモン〉である。
■解釈と現代的意義
この偈文は、欲望に囲まれながらも、それに「染まらず、反応せず、巻き込まれない」人間の在り方を示しています。
現代社会は、物欲・感情・承認欲求・情報など、心を汚す要素で満ちています。
その中で本当の自由を得るには、「それらに触れても動じない、染まらない心」が必要です。
この心のあり方は、無関心や抑圧ではなく、完全な目覚めと内的自由からくる態度であり、
仏教が理想とする「涅槃の境地」へ至るための核心を表しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
利害や誘惑に染まらぬ判断力 | 利益や昇進に目を奪われず、公正で冷静な判断を行う人は、長期的に信頼を築く。 |
ノイズを跳ね返す精神構造 | ネガティブな情報、陰口、周囲の焦りに影響されず、自分の軸で物事を進める力。 |
誠実さの継続 | 欲に流されず、常に一貫して倫理的に行動できる人は、組織の信頼資本を育む。 |
マインドフルネスの実践 | 外界の刺激に反応しすぎず、気づきを持って行動することで、心の穏やかさとパフォーマンスを両立させる。 |
■心得まとめ
「欲の中にあっても、心は清らかであれ」
世間の中で生きる者にとって、完全に欲望を絶つことは難しい。
しかし、その中にあっても「染まらず、付着せず」に生きる人――
それが、真の意味で自由で、尊敬される存在である。
ビジネスの世界でも、誠実・清潔・中立な心を保ち、
欲に揺らがずに判断と行動ができる人こそ、
組織の羅針盤として、信頼と尊厳を得るのです。
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