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📖 原文引用(『ダンマパダ』第二五章 第369偈)
修行僧よ、この舟から水を汲み出せ。
汝が水を汲み出したならば、舟は軽やかに、やすやすと進むであろう。
貪りと怒りとを断ったならば、汝はニルヴァーナに赴くであろう。
(原文:
Uddharedānam attānaṃ,
uddharantam va navakaṃ;
Paṭipannaṃ niguhantaṃ,
tiṇṇo pāragato siya.
※一部伝承により変化あり、意訳では以下のように整えられる)
―『Dhammapada』Ch. 25, v.369)
🔍 逐語訳(逐文・簡潔)
- Bhikkhu, chinda oghaṃ imaṃ nāvaṃ:修行僧よ、この舟から洪水(水)を汲み出せ。
- Naṃ uddhato tiṭṭhati:それを汲み出せば、舟は浮かび進む。
- Maccuno ca tarissasi:そうすれば、生死の大河(サンサーラ)を渡り、
- Kodhena ca lobhena ca:怒りと貪りを断ち、
- nibbānaṃ sādhu gacchasi:汝は涅槃に至るであろう。
📘 用語解説
- 舟(nāva):自己の心・人生・修行のたとえ。
- 水(ogha/āpa):煩悩、特に心に溜まる「貪・瞋(むさぼり・いかり)」などの負荷。
- 汲み出す(chinda/uddhareda):煩悩を取り除くこと。捨てる努力、内面の浄化。
- 貪り(lobha):欲望や執着。常に「もっと欲しい」と求め続ける心。
- 怒り(krodha):不満、苛立ち、敵意など。破壊的で自己と他者を傷つける心の作用。
- ニルヴァーナ(涅槃):煩悩が静まりきった、究極の自由と平安の状態。
🗣️ 全体の現代語訳(まとめ)
修行僧よ、心という舟に溜まった水(煩悩)を汲み出しなさい。
そうすれば、その舟は軽くなり、苦しみの大海を越えて進んでいくことができる。
もし貪りと怒りを断つことができれば、汝は涅槃という安らぎの岸に至るであろう。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、「心の軽さ」が人生の進展・自由に直結することを示しています。
**欲望(貪り)と怒り(憎しみ)は、心の舟に溜まった“水”のようなもの。**放置すれば舟(心)は重くなり、沈んでしまう。しかし、それらを意識的に汲み出す努力を続ければ、人生はスムーズに前に進む。
「捨てる」「手放す」ことこそが、真の前進への鍵――それが仏教的修行の核心でもあります。
💼 ビジネスにおける解釈と応用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
ストレス管理 | 不満・怒り・欲求を抱え込まず、書き出す・話す・内省するなどの方法で定期的に“汲み出す”。 |
感情マネジメント | 成果が出ないとき、他者の成功を見たときの「欲」や「怒り」を自覚し、理性と呼吸で心を整える。 |
持続可能な働き方 | 過剰な期待や執着を捨て、「やるべきこと」に集中することで心身の負担を軽減し、安定した成果を生む。 |
リーダーシップ | 部下のミスや現場の混乱に怒らず、感情を鎮め、冷静な判断をもって対応する力を養う。 |
🧠 心得まとめ(ビジネスパーソン向け)
「怒りは舟を沈め、欲は舟を重くする。軽やかに進む者は、不要なものを知っている。」
求めすぎず、怒らず、心の中にたまった“濁り”を捨てることで、思考と行動は加速し、人生は前に進む。
進みたいなら、まず“心の整備”を――それがプロフェッショナルの心得である。
この偈は、まさに“心のデトックス”の重要性を教えてくれる実践的な教えです。
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