糞土に生まれるうじ虫は、最も穢(けが)れた存在に見えるが、
やがて蝉となり、清らかな露を飲み、秋風の中で鳴く。
腐った草からは光がないが、そこに生じた蛍は、夏の夜に美しく輝く。
このように、清らかなものは常に汚れたものから生まれ、
光は常に闇の中から生まれてくる。
人の輝きもまた、逆境や苦しみの中から育まれるのである。
「糞虫(ふんちゅう)は至穢(しえい)なるも、変(へん)じて蟬(せみ)となりて露(つゆ)を秋風(しゅうふう)に飲(の)む。
腐草(ふそう)は光(ひかり)無(な)きも、化(か)して螢(ほたる)と為(な)りて采(さい)を夏月(かげつ)に耀(かがや)かす。
固(まこと)に知(し)る、潔(けつ)は常(つね)に汚(けが)れより出(い)で、
明(めい)は毎(つね)に晦(くら)きより生(しょう)ずるを。」
注釈:
- 糞虫(ふんちゅう)…糞に生まれる虫。ここでは蝉の幼虫の比喩として使われ、最も汚れた出自から清浄な存在へと変化する象徴。
- 至穢(しえい)…非常に汚れていること。極端な穢れ。
- 腐草(ふそう)…腐った草。無価値に見える存在。
- 采(さい)…光、光彩。ここでは蛍の放つ美しい光を指す。
- 晦(くら)き…暗闇。困難や逆境の象徴。
コメント