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📜 引用原文(日本語訳)
恥を知り、常に清きをもとめ、執著をはなれ、つつしみ深く、真理を見て清く暮す者は、生活し難い。
——『ダンマパダ』第18章「汚れ」第245偈
📘 逐語訳
- 恥を知り:善悪の分別と自己省察のある人。
- 常に清きをもとめ:心身の純粋さ・誠実さ・道徳的生き方を志す。
- 執著をはなれ:欲望・執念・こだわりから自由であること。
- つつしみ深く:謙虚で慎重、自己を律する態度。
- 真理を見て清く暮す:物事の本質を理解し、清らかな生活を送る。
- 生活し難い:世俗的な価値観や環境と相容れず、結果として苦労を伴う生き方。
🧾 用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
恥 | 道徳的・内省的感覚。自己の過ちを認める心。 |
清き | 心と行いの純粋さ、穢れなき状態。 |
執著(しゅうじゃく) | 対象に固執し、手放せない心の働き。 |
真理 | 仏教における「法(ダルマ)」。因果、無常、無我などの真理を指す。 |
生活し難い | 社会的には報われにくく、誤解されやすい生き方。 |
🌏 全体の現代語訳(まとめ)
自らの行いを省みて恥を知り、心を清く保ち、欲望や執着にとらわれず、慎み深く、物事の真実を見て正しく暮らそうとする人は、世の中ではかえって生きづらい。
だが、その生き方は誠実で尊く、真の意味で清らかな人生である。
💡 解釈と現代的意義
この偈は、**「清らかな生き方は困難を伴うが、尊いものである」**という仏教の逆説的真理を説いています。
世間では、図々しさや要領の良さが“成功”とされやすい一方、誠実さ・慎み・真理を重んじる生き方は評価されにくく、時に孤独や苦労を招くことがあります。
それでもなお、「清らかに生きよう」とする姿勢こそが、本当の意味で人として価値ある道であると仏陀は説いています。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
誠実な社員像 | 正直でルールを守り、誠意をもって対応する人は、一時的に損をするように見えても、長期的な信頼を築ける。 |
ガバナンスと倫理 | 法令遵守やコンプライアンスにこだわる人が「面倒だ」と見なされることもあるが、組織の良心として機能する。 |
内面的な評価 | 表面的な成果よりも、透明性・謙虚さ・思慮深さが、組織文化の質を高める。 |
慎みと長期視点 | 慎み深く、真理を見ようとする経営者は、短期的な利益よりも持続可能性を重視し、真の成長をもたらす。 |
🧭 心得まとめ
「世に背を向けず、世に媚びず、ただ清くあれ」
清くあろうとする人は、時に誤解され、道を阻まれ、孤独に陥ることさえある。
だがその人は、自分の魂に嘘をつかない。
それこそが、もっとも難しく、もっとも価値ある生き方である。
この偈は、前の第244偈(図々しく生きる者の「生活しやすさ」)との対比で、仏教の価値観を明快に打ち出した一節です。
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