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心に留めなければ、すべてはただ通り過ぎていく

耳に入ってくる雑音――
それは、谷間を吹き抜ける大きな風のようなもの。
その音を心に留めず、ただ通り過ぎるに任せていれば、
そこに「良い」「悪い」といった判断さえ生まれない。

また、心に浮かぶ雑念も、
池の水面に一瞬だけ映る月影のようなもの。
もしこちらの心が空(から)で、何も執着せずにいられるなら、
「物」も「自分」も――その区別すら忘れてしまうほど、静かで透明な境地に至る。

つまり、心が何かを「とどめる」からこそ、
そこに波が立ち、苦しみや悩みが生まれる。

ただ静かに、流れるままに。
それが「忘れる」という最高の智慧であり、心の自由なのである。


原文とふりがな付き引用

耳根(じこん)は颷谷(ひょうこく)の響(ひび)き投(な)ずるに似(に)て、過(す)ぎて留(と)めざれば、則(すなわ)ち是非(ぜひ)俱(とも)に謝(しゃ)す。
心境(しんきょう)は月池(げっち)の色(いろ)を浸(ひた)すが如(ごと)く、空(むな)しくして着(ちゃく)せざれば、則ち物我(ぶつが)両(ふた)つながら忘(わす)る。


注釈

  • 耳根(じこん):耳による感覚。仏教用語で「六根」の一つ。
  • 颷谷(ひょうこく):谷を吹きまくる激しい風。雑音や言葉のたとえ。
  • 謝す(しゃす):消える、過ぎ去る、消滅すること。
  • 心境(しんきょう):心の状態。内面の風景。
  • 月池(げっち):池に映った月。はかなく、実体のないものの象徴。
  • 着せざれば:執着しなければ。
  • 物我(ぶつが)両忘(りょうぼう):物と自己の両方を忘れる。分別やこだわりがない心の境地。

パーマリンク案(英語スラッグ)

let-it-pass-let-it-go
→「通り過ぎるままに、手放す」という教訓を直感的に表現しています。

その他候補:

  • non-attachment-is-freedom(執着なき心が自由をもたらす)
  • forget-and-be-free(忘れて、自由になる)
  • no-judgment-no-self(是非も我も、なければ悩まない)

この条は、「心をとどめることの危うさ」と「空にすることで得られる自由」の本質を突いています。

1. 原文

耳根似颷谷投響而不留、則是非俱謝。心境如月池浸色而不着、則物我兩忘。


2. 書き下し文

耳根(じこん)は颷谷(ひょうこく)の響(ひび)きを投(な)ぐるに似て、過(す)ぎて留(とど)めざれば、則(すなわ)ち是非(ぜひ)俱(とも)に謝(しゃ)す。
心境(しんきょう)は月池(げっち)の色(いろ)を浸(ひた)すがごとく、空(むな)しくして着(つ)けざれば、則ち物我(ぶつが)両(ふた)つながら忘(わす)る。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「耳が風の吹き抜ける谷のように、音を受け入れてもすぐに通り過ぎて留めなければ、是非の分別もまた自然と消えていく」
  • 「心の状態が、池に映る月の光のように澄みきっていて、何にもとらわれなければ、物と自分の区別すらも忘れることができる」

4. 用語解説

  • 耳根(じこん):五感のうちの聴覚の基点。仏教用語で、耳から入る情報に反応する心のはたらき。
  • 颷谷(ひょうこく):風の吹き抜ける谷。音が通り過ぎていく様子のたとえ。
  • 謝す(しゃす):やむ、消える、なくなる。
  • 月池(げっち):月が映る静かな水面(池)。感情が動かない穏やかな心の象徴。
  • 着せず(ちゃくせず):心にとどめず、執着しないこと。
  • 物我両忘(ぶつがりょうぼう):物と自分、主観と客観、自己と他者の区別を超えて、すべてを忘却する境地。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

耳が風の谷のように、音を聞いても心に留めなければ、世間の是非善悪なども自然と心から消えていく。
また、心が静かな池のように月を映しながらもそれにとらわれなければ、物と自分との境界すら忘れるほどに、心は自由である。
つまり、感覚にとらわれず、心を澄ませて生きれば、物事の対立や自己への執着から解放されるということである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「入ってきた情報に反応しすぎない」「心を澄ませ、無垢に保つ」という禅的な理想を説いています。

  • 他人の批評、評価、ノイズに耳をとられない
  • 心が澄んでいれば、外界の動きに揺れ動かされない
  • 執着を手放すことで、“私”と“世界”の境目すら超越できる

これは、ストレス社会に生きる現代人にとっても非常に有効な“心のマネジメント”のヒントです。


7. ビジネスにおける解釈と適用

✅ 「評価・批判・情報」に過敏に反応しすぎない

  • クレーム、風評、上司の一言に振り回されると本質が見えなくなる
  • 耳を澄ませるが、心に留めない「受け流す力」が必要

✅ 「心が澄んでいると、すべての物事がフラットに見えてくる」

  • 執着をなくすことで、自己中心的な判断から脱却し、客観的な判断が可能に
  • 人間関係でも「勝ち負け」「好き嫌い」の二元論を超えた対応ができる

✅ 「物我両忘」は“共創”の核心

  • 自分と相手、自社と他社、顧客と提供者の境界を超えてこそ、本当の連携・創造が起こる
  • 自我を捨てたところに、もっと自由で創造的な発想が生まれる

8. ビジネス用の心得タイトル

「聞いても流す、見ても執らわれず──“澄みきった心”が本質を照らす」


この章句は、EQ(感情知性)研修、アンガーマネジメント、コミュニケーション研修などに特に有効です。

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