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■引用原文(日本語訳)
「もしそれもできないなら、私へのヨーガに依存して、自己を制御し、すべての行為の結果を捨てよ。」
(『バガヴァッド・ギーター』第12章 第11節)
■逐語訳
もし「私のために行為すること」すら難しいならば、
“私に向かうヨーガ”に依存して、
自己を律し、
あらゆる行為の結果を放棄しなさい。
■用語解説
- 私へのヨーガ(マッ・ヨーガ):神(クリシュナ)とのつながりを目指す実践法。バクティ(信愛)を含む精神的な一体化の道。
- 依存して(アーシュリタハ):支えとして、拠り所として、神(理念)に身を委ねること。
- 自己を制御し(アートマ・ニグラハ):欲望や衝動、感情に流されずに自分を律すること。セルフマネジメント。
- 行為の結果を捨てよ(カルマ・パラ・ティヤーガ):自分の働きに対する見返りや執着を手放すこと。結果よりも誠実さを重んじる姿勢。
■全体の現代語訳(まとめ)
もし神のために行為することも難しいならば、せめて神聖な目的に依りながら、自分自身を制し、すべての行為の結果への執着を捨てなさい――とクリシュナは勧める。
■解釈と現代的意義
この節は、「最もやさしい実践レベル」として、行為の結果への執着を手放すことを提案しています。
「理想に心を集中する」ことも、「瞑想を続ける」ことも、「高い理念のために行動する」ことすら難しいとき――**せめて“結果に執着せずに、自分の心を整えながら行動する”**という、日常的で現実的なヨーガの実践が提示されています。
これはビジネスや人生における「サレンダー(委ねる)」や「プロセス志向」とも共鳴する思想です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
成果主義の罠からの脱却 | 数字や評価にばかり囚われると燃え尽きやすくなる。過程や誠実な行動に集中する姿勢が、持続可能な働き方を生む。 |
セルフマネジメント | 感情・欲望に振り回されず、自分を律する能力は、成果を超える信頼と安定につながる。 |
失敗への恐れからの解放 | 結果を手放せば、挑戦へのハードルが下がり、創造的かつ積極的に行動できるようになる。 |
■心得まとめ
「すべてを成そうとせず、執着を手放すことから始めよ」
理想に近づけない日もある。集中できない日もある。だが、「結果への執着を手放す」という小さな実践なら、今日からでもできる。
それは敗北ではない。むしろそこにこそ、真の自由と変容の入口がある。
『ギーター』は、どんな状態にある人にも寄り添い、最も柔らかく、しかし確かな道を示してくれる。
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