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心は風のように、雁の影のように——出来事が過ぎれば、執着せず心を空に戻す

風が吹き、まばらな竹に当たると、竹の葉はざわめき音を立てる。
だが風が去れば、その音は消え、竹はもとの静けさを取り戻す。

雁が寒い澄んだ湖の上を飛びすぎるとき、水面にはその影が一瞬映る。
だが雁が飛び去れば、その影も消え、水面は再び凪ぐ。

これと同じように、君子の心は「今、起こっている事」にだけ応じ、
事が去れば、心もそれと共に静まり、余韻や執着を残すことがない。

過ぎたことにとらわれ続けるのではなく、
常に「今ここ」に応じる心こそが、清らかで自由な境地である。


原文とふりがな付き引用

風(かぜ)、疎竹(そちく)に来(き)たる、風(かぜ)過(す)ぎて竹(たけ)は声(こえ)を留(とど)めず。
雁(がん)、寒潭(かんたん)を度(わた)る、雁(がん)去(さ)って潭(たん)は影(かげ)を留(とど)めず。
故(ゆえ)に君子(くんし)は事(こと)来(き)たって心(こころ)始(はじ)めて現(あら)われ、事(こと)去(さ)って心(こころ)随(したが)って空(むな)し。


注釈(簡潔に)

  • 疎竹(そちく):まばらに生えた竹。風の通りがよく、響きやすい。
  • 寒潭(かんたん):澄み切った冷たい深い水の淵。静寂の象徴。
  • 心始めて現る:状況に応じて心が起こる。反応は自然であること。
  • 心随って空し:出来事が去れば、心も一緒に空に戻る。執着のなさ。

パーマリンク案(英語スラッグ)

let-go-like-the-wind
「風のように執着なく生きる」という主旨を詩的に表したスラッグです。

その他の案:

  • no-trace-no-tether
  • respond-then-release
  • presence-without-clinging

この章は、「反応はするが、引きずらない」という理想的な心の在り方を、
自然の美しいたとえを使って示しています。

風や雁のように、自然に動き、自然に去る。
現代において、過去の後悔や出来事に囚われやすい私たちにとって、
この「空に戻る心」は、非常に静かで力強いヒントとなるでしょう。

1. 原文

風來疎竹、風過而竹不留聲。雁度寒潭、雁去而潭不留影。故君子事來而心始現、事去而心隨空。


2. 書き下し文

風、疎竹(そちく)に来たる。風過ぎて、竹は声を留めず。
雁、寒潭(かんたん)を度(わた)る。雁去って、潭(たん)は影を留めず。
故に君子は、事来たりて心始めて現れ、事去って心随(したが)って空し。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳す)

  • 風來疎竹、風過而竹不留聲。
     → 風がまばらな竹林を吹き抜けるとき、風の音がするが、風が通り過ぎれば、その音は何も残らない。
  • 雁度寒潭、雁去而潭不留影。
     → 雁が冷たい池を飛び越えても、その影は雁が去れば水面には何も残らない。
  • 故君子事來而心始現、事去而心隨空。
     → だから君子(徳ある人物)は、物事が起きたときにだけ心を働かせ、
       事が終われば、その心もまた空(から)になって執着を残さない。

4. 用語解説

  • 疎竹(そちく):節の間隔が広い、まばらな竹。風通しがよく、象徴的に「心の余白・柔らかさ」を示す。
  • 寒潭(かんたん):冷たく澄んだ深い池。心の静けさや透明さの象徴。
  • 不留聲・不留影:音や影といった「一時的なものを引きずらない」という意味。
  • 君子(くんし):理想的な人格者。高潔で思慮深く、感情に支配されない人。
  • 心始現・心隨空:必要なときにだけ心を働かせ、用が済めばすぐに心を空に戻すこと。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

風が疎らな竹林を吹き抜けても、その音はすぐに消え、雁が冷たい池を渡っても、池には影が残らない。
このように、君子(人格者)は、物事が起こったときにだけ心を働かせ、
それが過ぎれば心もまた何も留めることなく、すぐに静けさを取り戻すのである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「心に何も引きずらない柔らかさと澄明さ」**を理想とする教えです。

  • 心を働かせるべきときにはしっかり反応し、しかしその執着を持ち続けない──これが理想の心の在り方。
  • 感情や出来事に囚われず、「必要なときに集中し、過ぎたら手放す」という柔軟で自在な精神状態。
  • 禅や老荘思想にも通じる「無為自然・心の空(くう)」の境地を、詩的に説いています。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

▪ 過ぎた案件・失敗に心を引きずらない

プロジェクトやトラブルが終わった後も、いつまでも引きずっていては前に進めない。
成功も失敗も「風や雁のように通り過ぎたもの」と捉え、切り替えの早さ=精神的な成熟といえる。

▪ 対応は「必要なときに最大限」、そして「終わったら手放す」

顧客対応・トラブル処理・意思決定など、対応すべきときには全力で向き合う。
しかし、それが終われば、頭と心を空に戻し、次に向かう──これがプロフェッショナリズム。

▪ 執着しないマインドセットがリーダーを作る

部下やプロジェクトに過剰な期待・執着を持ちすぎると、評価や人間関係を誤る。
心を整え、必要なときに心を働かせ、終われば手放す──これがリーダーに必要な「柔らかく澄んだ心」。


8. ビジネス用の心得タイトル

「過ぎた事に執着せず──“風のごとく、雁のごとく”自在な心を保て」


この章句は、仕事でも人生でも非常に重要な「心の切り替え力・手放す力」を教えてくれます。
常に心を空に保ち、必要なときだけ集中して反応できる人こそが、本当の意味で自由で力強い人物であり、
また組織の中で信頼される存在となるのです。

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